【2026年版】マイクロ法人の月次試算表の読み方|一人社長が毎月見るべき3つの数字
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「試算表って毎月出てくるけど、どこを見ればいいの?」
「数字が並んでいるだけで、正直よくわからない」
「決算になって初めて利益を知る、という状態から抜け出したい」
先に前提を整理します。この記事で言うマイクロ法人とは、個人事業を続けながら、役員が自分ひとりだけの小さな会社(多くは合同会社、株式会社でも可)を別に持ち、役員報酬を低めに設定することで社会保険料の負担を抑える仕組みのことです。全体像はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説をご覧ください。
会計ソフトで記帳していると、毎月「試算表」という表が作られます。項目がずらりと並ぶので敬遠しがちですが、一人社長が見るべきところは3つだけです。私も顧問税理士の先生に「全部読もうとしなくていいので、この3つだけ毎月見てください」と言われて、ようやく続くようになりました。
- 試算表とは何を示している表なのか
- 毎月見るべき3つの数字
- 数字がおかしいときの原因の探し方
- 決算前に慌てないための使い方
試算表は「今の状態」を映した表
試算表は、その時点までの記帳を集計した表です。大きく2つのパートに分かれています。
| パート | 何がわかるか |
| 貸借対照表の部分 | 今いくら持っていて、いくら払う義務があるか(残高) |
| 損益計算書の部分 | 期首から今までにいくら稼ぎ、いくら使ったか(累計) |
決算書は年に1回しか作りませんが、試算表は毎月「今の決算書」を見ているのと同じものです。だから毎月見ておけば、決算で初めて利益を知るという状態を避けられます。決算そのものの進め方は法人の決算・申告は自分でできる?で扱っています。
見るべき数字①:現預金の残高
まず見るのは現預金です。ここで確認するのは金額の大小ではなく、実際の法人口座の残高と一致しているかです。
一致していれば、その月の入出金はすべて記帳できていると判断できます。逆にずれていれば、取り込み漏れか二重計上か、どこかで処理が抜けています。この1点だけで、経理が崩れていないかを確かめられるため、最初に見る価値があります。
ずれの原因でよくあるのは、連携が止まっていて明細が入ってきていない、同じ支出をカード利用時と引き落とし時の両方で費用にしている、といったパターンです。原因の切り分け方は自動仕訳ルールの作り方でも触れています。
見るべき数字②:預り金の残高
次が預り金です。マイクロ法人では、役員報酬から差し引いた源泉所得税と社会保険料の本人負担分がここに乗ります。
正常な動きは、支給で増えて、納付で減るという往復です。したがって残高は「まだ納めていない分」程度に落ち着きます。
| 残高の様子 | 考えられる原因 |
| 毎月じわじわ増えていく | 納付の仕訳が漏れている、または納付自体が漏れている |
| マイナスになっている | 支給時に預かる処理が抜けている |
| 納付前に増え、納付後に戻る | 正常 |
預り金は、放置すると決算のときに理由を説明できない残高として残ります。逆に毎月見ていれば、その場で直せます。処理の型は役員報酬の仕訳はどう入力する?と社会保険料の仕訳はどうする?で解説しています。
見るべき数字③:今の利益
3つ目が、期首から今までの利益です。ここを見る目的は納税額の見通しを立てることです。
法人には、利益に応じて課される税金があります。加えて、赤字でも法人住民税の均等割は発生します。つまり「利益が出ていないから納税もない」とは限りません。この点はマイクロ法人は赤字でも均等割7万円?で扱っています。
期の途中で利益の水準がわかっていれば、決算までに資金を確保できます。逆に決算月に初めて利益を知ると、納税資金が足りないという事態になりかねません。マイクロ法人は利益規模が小さいぶん、数十万円の納税でも資金繰りに響きます。法人が納める税金の全体像はマイクロ法人が払う税金一覧で整理しています。
役員報酬とのバランスも見えてくる
利益を毎月見ていると、役員報酬の設定が今の事業規模に合っているかも見えてきます。利益が想定より大きく出ているなら、翌期の報酬設計を考える材料になります。ただし期中に役員報酬を動かすと税務上の扱いが変わるため、変更は慎重に判断してください。詳しくは役員報酬は途中で変更できる?をご覧ください。
数字がおかしいときの探し方
「なんだかおかしい」と思ったときは、上から順に切り分けていくと早く見つかります。
- 現預金が口座と合っているか:合っていなければ取り込みの問題
- 合っているのに利益が変なら、科目の付け方を見る:本来資産にすべきものを費用にしていないか
- 費用が急に増えていたら、二重計上を疑う:同じ支出が2件入っていないか
- 売掛金の残高に説明がつくか:入金の消し込み漏れがないか
この順番で見ると、たいていは1か2で原因が見つかります。売掛金の考え方はマイクロ法人の売上はどう記帳する?を参照してください。
決算前に慌てないための使い方
試算表を毎月見る最大の効果は、決算前の作業がほぼなくなることです。毎月の段階で残高に説明がついていれば、決算では締めるだけになります。
私は月末に、現預金・預り金・利益の3つを見て、気になる点があればその場で直すだけにしています。時間は5分もかかりません。「分析」ではなく「点検」だと割り切ると続きます。月次で何をするかの全体像はマイクロ法人の毎月の経理ルーティンにまとめています。
半年に一度は、もう少し広く見る
毎月は3つで十分ですが、半年に一度くらいは少し広く眺めておくと、翌期の設計に使えます。見るのは次の3点です。
- 売上の推移:季節や案件の偏りがないか。売上ゼロの月が続いていないか
- 費用の内訳:使っていないサブスクや、増え続けている費目がないか
- 法定福利費と役員報酬のバランス:報酬の水準に対して不自然でないか
とくに1つ目は、マイクロ法人にとって事務の話にとどまりません。売上が継続的に立っていること自体が、法人が独立した事業であることの裏づけになるからです。この論点はマイクロ法人は「実態なし」と言われない?で扱っています。
2つ目も地味に効きます。私は半年ごとの確認で、使っていないサービスの課金を2件見つけて解約しました。利益が小さいマイクロ法人では、数千円の固定費でも年単位では無視できません。
税理士に見てもらう場合の渡し方
決算だけ税理士に依頼している場合でも、月次の試算表があると相談がスムーズになります。「今期はこのくらいの利益になりそうです」と早い段階で共有できれば、決算になってからでは打てない手について助言をもらえる可能性があります。
データを共有できる状態にしておけば、資料を作って送るという作業自体がなくなります。依頼する範囲の決め方は決算、自分でやる範囲と税理士に頼む範囲、費用感は決算・申告を税理士に頼むといくら?で整理しています。
逆に、記帳が数か月止まっている状態で相談しても、まず現状を把握する作業から始まります。毎月点検しておくことは、自分のためであると同時に、相談相手に早く動いてもらうための準備でもあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 試算表は全部読まないといけませんか?
A. 一人社長なら、現預金・預り金・利益の3つを見るだけで十分です。全部を理解しようとすると続かないので、点検する項目を絞ってください。
Q. 現預金が口座と合わないときは何を見ますか?
A. 連携が止まって明細が入っていないか、同じ支出を二重に計上していないかをまず確認してください。この2つでほとんどのずれが説明できます。
Q. 預り金の残高はいくらが正常ですか?
A. 金額の絶対値ではなく動き方を見ます。納付前に増えて納付後に減るなら正常です。毎月積み上がっていく場合は納付か仕訳の漏れを疑ってください。
Q. 利益が出ていなければ納税はありませんか?
A. 赤字でも法人住民税の均等割は発生します。利益が出ていない年も納税があることを前提に、資金を確保しておいてください。
Q. 毎月見る時間が取れません。
A. 3つの数字を見るだけなら数分で終わります。分析ではなく点検と割り切り、月末の決まった時間に固定してしまうと続きやすくなります。
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日々の記帳を積んでおけば、試算表は自動で作られます。あとは現預金・預り金・利益の3つを見るだけ。決算月に初めて利益を知る、という状態から抜け出せます。
まとめ:3つだけ見れば、決算は締めるだけになる
この記事の要点を整理します。
- 試算表は「今の決算書」。毎月見れば決算で驚かない
- ①現預金=口座と一致しているか(経理の崩れを検知)
- ②預り金=支給で増え納付で減る動きになっているか
- ③利益=納税の見通しを立てる。赤字でも均等割はかかる
- 分析ではなく点検。月に5分で十分
試算表は、経理が正しく回っているかを教えてくれる健康診断のような存在です。全部を読み解く必要はありません。3つの数字を毎月眺めるだけで、決算前の慌ただしさと納税資金の不安がまとめて解消します。
※本記事は2026年8月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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