【2026年版】法人の決算・申告は自分でできる?税理士なしの現実と失敗しない選択肢

確定申告・税務調査
【2026年版】法人の決算・申告は自分でできる?税理士なしの現実と失敗しない選択肢

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「法人の決算って、個人の確定申告みたいに自分でできないの?」
「税理士に年20万円も払う余裕はない。自力でやって何がまずい?」
「『法人 決算 自分で』で検索したら脅し文句ばかり。実際のところどうなの?」

法人を作った人が最初にぶつかる現実が、毎年必ずやってくる決算・申告です。個人事業主時代の確定申告は自分でやれていた人でも、法人1期目の申告書類を前にして固まる——これは本当によくある話です。

筆者は現役のマイクロ法人社長です。マイクロ法人とは、個人事業主が役員一人だけの法人(合同会社が主流、株式会社でも可)を別に設立し、役員報酬を最小限に設定することで社会保険料の負担を大幅に抑える「マイクロ法人スキーム」の器のこと(スキームの全体像はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説を参照)。この手の法人は取引がシンプルなので「自分で申告できるのでは?」と考える人が多く、実際に自力でやっている社長も存在します。一方で、途中で挫折して期限ギリギリに税理士へ駆け込む人も見てきました。

この記事では、現役のマイクロ法人社長として、また顧問税理士の先生から教わった内容をベースに、ポジショントークなしで、

  • 法人の決算・申告と個人の確定申告の難易度の違い
  • 自分でやる場合の手順と必要書類
  • 最大のハードル「別表」と地方税申告の実態
  • 自力派を助けるツールと限界
  • 売上規模別の時間対効果と「丸投げ」の損益分岐

を、率直に解説します。自力を否定する記事ではありません。「できるかどうか」と「やるべきかどうか」を分けて判断できるようになるのがゴールです。

法人の決算・申告は、個人の確定申告と何が違うのか

結論から言うと、難易度は段違いです。個人の確定申告が「家庭料理」なら、法人の決算・申告は「コース料理を規定のレシピ通りに再現する」イメージ。同じ「申告」という名前でも、求められる作業の質が違います。

項目 個人の確定申告 法人の決算・申告
提出書類 確定申告書+青色決算書 法人税申告書(別表)+決算書+勘定科目内訳明細書+事業概況説明書+地方税申告書
提出先 税務署のみ 税務署+都道府県+市町村の最大3か所
会計のルール 簡易でも許容されやすい 複式簿記+税務調整が前提
申告期限 翌年3月15日 決算日から2か月以内
ソフトの自動化度 ほぼ全自動まで進化 会計までは自動化、申告書作成は別途知識が必要

特に効いてくるのが、「会計上の利益」と「税務上の所得」が一致しないという法人税特有の考え方です。個人の申告では意識しなかった「税務調整」という工程が入り、これを反映するための書類群が悪名高い「別表」です(後述)。

自分でやる場合の手順:決算から申告までの7ステップ

全体の流れを先に示します。決算日(例:3月31日)から2か月以内にすべて完了させる必要があります。

  • ① 日々の記帳を締める:全取引を会計ソフトに入力し、預金残高と帳簿を一致させる
  • ② 決算整理仕訳:減価償却、未払費用・前払費用の計上、棚卸、貸倒引当金など
  • ③ 決算書の作成:貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表
  • ④ 勘定科目内訳明細書の作成:預金・売掛金・買掛金・役員報酬などの内訳を科目ごとに記載
  • ⑤ 法人税申告書(別表)の作成:ここが最難関。会計利益から税務所得への調整
  • ⑥ 地方税申告書の作成:都道府県民税・市町村民税・事業税
  • ⑦ 電子申告(e-Tax・eLTAX)+納付

マイクロ法人のようなシンプルな法人であれば、①〜④は会計ソフトの機能でかなりの部分をカバーできます。経費の判断に迷ったら法人で経費にできるもの一覧を手元に置いておくと①②の精度が上がります。問題は⑤と⑥です。

最大のハードル:法人税申告書と「別表」の世界

法人税申告書は「別表一」「別表四」「別表五(一)」…といった様式の束でできています。小規模法人でも最低限これくらいは登場します。

  • 別表一:申告書の表紙。税額計算の総まとめ
  • 別表二:同族会社の判定(マイクロ法人はほぼ100%同族会社)
  • 別表四:会計上の利益に税務調整を加えて「所得」を計算する中核の表
  • 別表五(一)(二):純資産の税務上の内訳と、租税公課の処理
  • 別表七:赤字(欠損金)の繰越がある場合
  • 別表十五:交際費の損金算入の計算
  • 減価償却関連の別表十六:固定資産がある場合

初見の人がつまずくポイントは共通していて、別表四と別表五(一)の連動(片方を直すともう片方も直る、パズルのような対応関係)、法人住民税・事業税の損金算入タイミング繰越欠損金の引き継ぎあたりです。顧問税理士の先生いわく「別表は簿記の知識とは別モノ。簿記1級を持っていても初年度は戸惑う人が多い」とのこと。

ただし、希望もあります。取引が少なく、赤字か利益が小さく、固定資産もほとんどないマイクロ法人なら、埋めるべき欄はかなり限られます。2期目以降は前年の申告書を「型」にして数字を入れ替える作業に近くなるため、1期目さえ乗り切れば難易度は大きく下がるのが実感です。マイクロ法人に特化した自力申告の具体的な進め方はマイクロ法人の確定申告を自分でやる方法で詳しく解説しています。

忘れられがちな地方税:提出先は最大3か所

法人税(国税)に気を取られて忘れがちですが、法人は都道府県と市町村にも申告が必要です(東京23区は都税事務所に一本化)。

  • 法人都道府県民税・法人事業税:都道府県税事務所へ
  • 法人市町村民税:市役所・町村役場へ
  • 均等割は赤字でも発生:法人住民税の均等割(年7万円前後が目安)は利益ゼロでも納付が必要

地方税の申告書は法人税申告書の数字をベースに作るので、順番としては「国税→地方税」。電子申告は国税がe-Tax、地方税がeLTAXとシステムが別で、初年度は利用開始手続きだけでも半日仕事になります。ここも「知らずに期限直前に着手して詰む」ポイントなので、初回は余裕を持って準備してください。

自力派のためのツール:会計ソフト+申告ソフトの二段構え

自力でやる場合の現実的な装備は「クラウド会計ソフト+法人税申告ソフト」の組み合わせです。

  • クラウド会計ソフト(マネーフォワード、freee、弥生会計など):記帳〜決算書作成まで。年1〜4万円前後が目安
  • 法人税申告ソフト(全力法人税、freee申告など):決算書のデータを取り込んで別表を作成。無料〜年2〜3万円前後の価格帯
  • e-Tax・eLTAX:提出は無料。マイナンバーカードまたは税理士なしの法人でも取得できる電子証明書が必要

特に小規模法人向けの申告ソフトは「質問に答えると別表ができる」方向に進化していて、マイクロ法人の定番構成(売上少なめ・役員1人・固定資産なし)なら、簿記の基礎知識がある人が土日2〜3回分の時間をかければ完走できる水準になってきています。ただし、ソフトは「入力が正しい前提で計算する」だけで、入力の正しさ(そもそもこの取引をどう処理すべきか)は保証してくれません。ここが自力の限界ラインです。

時間対効果で考える:売上規模別の現実解

「できるか」ではなく「やるべきか」を、売上規模別に整理します。あくまで一般的な傾向としての目安です。

法人の状況 現実解の目安
売上ゼロ〜数百万円のマイクロ法人(取引シンプル) 自力の合理性が最も高い。申告ソフト併用で完走可能圏
売上500万〜1,000万円前後 分岐点。消費税の課税事業者になると難易度が跳ね上がるため、決算のみスポット依頼も有力
売上1,000万円超・取引先多数・在庫あり 税理士依頼が標準解。自力の時間コストと誤りリスクが割に合わない
融資・補助金・許認可で決算書の「見た目」が重要 規模を問わず税理士関与を推奨

判断の軸はシンプルで、「自分の時給×決算にかかる時間」と「外注費」の比較です。初年度の自力決算は調べ物込みで40〜60時間かかったという声が多く、仮に自分の時給を3,000円とすれば12〜18万円分の時間を投じる計算。これが税理士の決算料と同水準なら、外注して本業に時間を使う方が合理的、という見方もできます。逆に、時間に余裕があり、税務の仕組みを理解すること自体に価値を感じる人(筆者はこちら寄りです)にとっては、自力1期分の経験は何よりの勉強になります。

「丸投げ」という選択肢:費用相場と損益分岐

税理士への依頼形態は大きく2つあります。

  • 顧問契約:月額+決算料。小規模法人で年20〜40万円前後が相場と言われる
  • 決算のみスポット依頼:記帳は自分、決算・申告だけ依頼。年7〜15万円前後の価格帯が多い
  • 格安の丸投げ型サービス:記帳から申告までまとめて月数千円〜の定額で請けるオンライン型も登場

詳しい相場観は税理士費用の相場まとめに譲りますが、損益分岐の考え方はこうです。

①自分の時間単価が高い人・本業が忙しい人ほど外注が有利。②消費税の課税事業者・インボイス対応が絡む法人は誤りのリスクコストが大きく、外注の保険価値が高い。③取引がシンプルで時間のあるマイクロ法人社長は自力の合理性が残る。——つまり万人共通の正解はなく、「自分の時間の値段」と「間違えたときの被害額」で決まるということです。

折衷案として、1期目だけ税理士に依頼して申告書の「完成形」を手に入れ、2期目から自力に切り替える方法も、顧問税理士の先生が「アリ」と認める現実的な戦略です。前年の申告書という最強のお手本があれば、自力のハードルは大きく下がります。

よくある質問(FAQ)

Q. 税理士なしで申告すると税務調査に入られやすいって本当?

A. 「税理士の署名がないだけで調査対象になる」という単純な話ではない、と顧問税理士の先生は言います。ただし、申告書の不備・数字の不整合は調査のきっかけになり得るため、結果的に「自力申告の品質が低い場合はリスクが上がる」のは事実。自力でやるなら別表の整合性チェックは入念に。

Q. 期限(決算日から2か月)に間に合わなかったらどうなる?

A. 無申告加算税・延滞税のペナルティに加え、2期連続で期限後申告になると青色申告の承認が取り消されるのが最大の痛手です。欠損金の繰越などの特典を失います。間に合わないと悟った時点で、期限内に概算で申告して後から修正する等の対応を税理士に相談してください。

Q. 赤字(利益ゼロ)でも申告は必要ですか?

A. 必要です。赤字でも申告義務はあり、法人住民税の均等割(年7万円前後)も発生します。むしろ赤字の年こそ申告して欠損金を繰り越さないと、翌期以降の節税の権利を失います。

Q. 会計ソフトだけで申告まで完結できますか?

A. ソフトによります。多くのクラウド会計ソフトは決算書までが守備範囲で、法人税申告書(別表)は別途申告ソフトが必要です。freeeのように申告まで一気通貫のプランを持つものもあるので、契約前に「別表作成・電子申告まで対応か」を確認してください。

Q. マイクロ法人でも消費税の申告は必要?

A. 基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス登録もしていなければ免税事業者のため消費税申告は不要です。ただしインボイス登録をした瞬間に売上規模にかかわらず消費税申告が必要になります。ここは自力難易度を大きく左右する分岐点なので、登録判断は慎重に。

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まとめ:「できるか」と「やるべきか」を分けて考える

法人の決算・申告は、シンプルなマイクロ法人であれば自力で完走することは可能です。ただしそれは「個人の確定申告の延長」ではなく、別表と地方税という新しい山を登る作業。可能かどうかと、あなたがやるべきかどうかは別問題です。

  • 法人の申告は個人と難易度が段違い。中核は「別表」と地方税
  • 取引がシンプルなマイクロ法人+申告ソフトなら自力完走は現実的
  • ただし初年度は40〜60時間級。自分の時間単価と比較して判断する
  • 消費税・インボイスが絡むなら外注の保険価値が高い
  • 「1期目だけ税理士→2期目から自力」の折衷案も有力

どちらの道を選ぶにせよ、期限(決算日から2か月)だけは絶対です。決算月の3か月前には方針を決めて動き始めてください。

※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

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