【2026年版】マイクロ法人の株主総会・議事録・意思決定の実務|一人社長でも記録を残す理由
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「一人だけの会社なのに、株主総会なんて開く必要あるの?」
「議事録って、自分ひとりでも作らないといけないの?」
「合同会社にも株主総会があるの?」
最初に前提を共有します。この記事で扱うマイクロ法人とは、個人事業を続けながら、役員が自分ひとりだけの小さな会社(多くは合同会社、株式会社でも可)を別に設立し、役員報酬を低めに抑えることで社会保険料の負担を軽くする「マイクロ法人スキーム」の器となる法人のことです。この仕組みで社会保険料がどう下がるのかは、マイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説に全体像をまとめています。
一人だけの会社だと、「意思決定も何も、全部自分で決めているのだから記録なんていらないのでは」と感じがちです。私も最初はそう思っていました。ですが顧問税理士の先生から「一人でも、決めたことは書面で残しておいたほうがいい」と助言され、実際に役員報酬を決めるときなどに記録を作るようになりました。この記事でわかることは次のとおりです。
- 合同会社と株式会社で意思決定の形が違うという基本
- 一人社長でも議事録・同意書を残しておく理由
- 役員報酬を決める定時株主総会・決定書の型
- 作成のタイミングと保存、書面決議で省略できる場合
合同会社に「株主総会」は存在しない
まず、いちばん誤解が多いところを整理します。株主総会があるのは株式会社だけで、合同会社には株主総会は存在しません。合同会社には「株主」という概念がなく、出資者は「社員」と呼ばれます。意思決定は社員の同意によって行い、必要に応じて同意書や決定書といった書面を残します。
マイクロ法人は合同会社を選ぶ人が多いので、この点はしっかり押さえておきたいところです。ネット上の記事には「マイクロ法人の株主総会」といった表現も見かけますが、自分の会社が合同会社なら、正確には株主総会ではなく「社員の同意・決定書」で考えることになります。逆に株式会社を選んだ場合は、株主総会が正式な意思決定の場になります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 出資者の呼び方 | 株主 | 社員(出資者のこと) |
| 意思決定の場 | 株主総会 | 社員の同意(株主総会はない) |
| 残す書面 | 株主総会議事録 | 同意書・決定書 |
会社の種類による違いは、維持費や使い勝手にも表れます。合同会社を選ぶ場合の全体像は合同会社の維持費もあわせて読むと、意思決定の負担も含めてイメージしやすくなります。
一人社長でも議事録・同意書を残す理由
「一人で決めているのに、なぜわざわざ書面に残すの?」という疑問はもっともです。それでも記録を残しておくのには、実務的な理由があります。
- 役員報酬の決定を裏づけるため:定期同額給与は、いつ・いくらに決めたのかを説明できることが大切です。決定の記録があると、税務面での説明がしやすくなります
- 銀行や税務署などへの対応のため:融資や各種手続きで、会社としての意思決定の記録を求められることがあります
- 登記の添付書類として必要な場面があるため:役員変更や本店移転などの登記で、議事録や決定書の添付が求められることがあります
特に大きいのが役員報酬です。マイクロ法人スキームは役員報酬の水準が要になるため、「いつ、いくらに決めたか」を書面で残しておくことは、後々の説明の備えになります。適正な役員報酬の考え方そのものは役員報酬はいくらが最適かで整理しているので、金額を決めるときの参考にしてください。
私自身、最初は「形式的で面倒だな」と感じていましたが、決めたことを書面にしておくと、翌年に「去年はどう決めたっけ」と迷わずに済むという実利がありました。記録は、外向けの備えであると同時に、自分自身の備忘にもなります。
役員報酬を決める「定時株主総会・決定書」の型
マイクロ法人で意思決定の記録がいちばん活きるのが、役員報酬を決める場面です。役員報酬は原則として、事業年度の開始から一定期間内に決めた金額を、その期のあいだ毎月同額で支給します。この「決めた」事実を書面にしておきます。
株式会社の場合
株式会社では、事業年度ごとに定時株主総会を開き、その場で役員報酬の総額などを決議して議事録に残す、という流れが基本です。一人株主・一人役員であっても、形式としては株主総会の決議という形を取り、議事録を作成しておきます。
合同会社の場合
合同会社では株主総会がないため、社員(出資者)の決定として、役員報酬を定める決定書を作成します。呼び方や様式は株式会社と異なりますが、「いつ・いくらに決めたか」を明確に残すという目的は同じです。
いずれの場合も、盛り込むべき要素はシンプルです。決定した日付、決定した内容(役員報酬の額や支給方法)、決定した人(株主・社員)を記載し、署名・記名をしておきます。マイクロ法人は登場人物が自分ひとりのことが多いので、テンプレートを一度作ってしまえば、毎年ほぼ同じ形で使い回せます。役員報酬を実際にどう支給していくかは役員報酬の払い方にまとめています。
役員報酬以外に記録を残しておきたい場面
意思決定の記録が役立つのは、役員報酬のときだけではありません。マイクロ法人でも、次のような場面では書面を残しておくと後々スムーズです。
- 決算の承認:事業年度ごとに決算書の内容を確定させる場面。株式会社なら定時株主総会での承認、合同会社なら社員の確認として記録しておきます
- 役員の変更や住所の変更:登記が必要になる変更では、その決定の記録が登記の添付書類として求められることがあります
- 本店の移転や事業目的の追加:定款にかかわる変更は、変更の決議とその記録が前提になります
これらはいずれも「毎年必ず起きる」ものではありませんが、必要になったときに記録がないと、あとから作り直したり、日付の整合が取れなくなったりして手間がかかります。決めた事実は、決めたそのタイミングで書面にしておくのが、結局いちばんラクな進め方です。私も、決算を確定させたタイミングでその年の書類をまとめて作り、フォルダに綴じておくようにしています。
作成のタイミング・保存と、省略できる場合
書面を作るタイミングと、保存の考え方も押さえておきましょう。
作成のタイミング
役員報酬に関する意思決定は、事業年度の開始後、決められた期間内に行うのが基本です。期の途中で報酬額をむやみに動かすと税務上不利になることがあるため、「期の初めにきちんと決めて記録し、その後は淡々と同額を支給する」という流れを意識するとよいでしょう。設立後にいつ何をするかの全体像は設立後の年間スケジュールカレンダーで確認できます。
保存
作成した議事録や決定書は、会社の重要書類として保管しておきます。ほかの帳簿書類と同じように、一定期間はきちんと残しておくのが安全です。ファイルにまとめておけば、翌年の作成時や、登記・融資などで求められたときにすぐ取り出せます。
書面決議による省略
株式会社では、一定の要件を満たせば、実際に総会を「開催」せずに書面等で決議を成立させる方法(書面決議・みなし決議)も認められています。一人株主のマイクロ法人では、この書面決議の形を取ることが多く、実際に会議室で会議を開くわけではありません。ただし、省略できるのはあくまで「開催」であって、決定した事実を書面に残すこと自体は省略しないのが基本です。手続きの細かな要件は会社の定款や状況によって変わるため、迷う場合は専門家に確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 合同会社にも株主総会はありますか?
A. ありません。株主総会は株式会社の制度で、合同会社には株主も株主総会も存在しません。合同会社では社員(出資者)の同意によって意思決定を行い、決定書などの書面を残します。
Q. 一人だけの会社でも議事録は本当に必要ですか?
A. 実際に大人数で会議を開く必要はありませんが、役員報酬の決定や登記の添付など、決めた事実を書面で示す場面はあります。一人でも記録を残しておくほうが、後の説明や手続きで困りにくくなります。
Q. 議事録や決定書は、どこかに提出するのですか?
A. 通常は会社で保管しておく書類で、毎年どこかへ提出するものではありません。ただし、登記手続きの添付書類として必要になることや、融資などで求められることがあります。
Q. 役員報酬を決めた記録がないと、どうなりますか?
A. 役員報酬は「いつ・いくらに決めたか」を説明できることが望ましいため、記録がないと税務面での説明が難しくなることがあります。トラブルを避ける意味でも、決定の記録は残しておくのが安全です。
Q. 書面決議にすれば、記録も作らなくてよいのですか?
A. いいえ。書面決議で省略できるのは会議の「開催」であって、決定した内容を書面に残すこと自体は必要です。省略できる範囲や要件は定款や状況によるため、判断に迷う場合は専門家に確認してください。
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まとめ:一人でも「決めた記録」は残しておく
この記事の要点を整理します。
- 株主総会は株式会社の制度で、合同会社には存在しない(社員の同意・決定書で対応)
- 一人社長でも、役員報酬の決定・登記・対外対応のために記録を残す
- 役員報酬は期の初めに決め、議事録・決定書に残すのが基本
- 書面決議で「開催」は省略できても、決定の記録は省略しない
- 作成した書類は会社の重要書類として保管しておく
意思決定の記録は、形式的に見えて、いざというときに自分を助けてくれる備えです。合同会社と株式会社で呼び方や様式は違いますが、「決めたことを、いつ・いくらか分かる形で残す」という本質は同じです。テンプレートを一度整えておけば、毎年の負担はごくわずかで済みます。判断に迷う場面が出てきたら、税理士や司法書士など専門家に相談しながら進めてください。
※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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