マイクロ法人に税理士は必要?費用相場・自分でやる場合の限界【2026年版】

法人設立
マイクロ法人に税理士は必要?費用相場・自分でやる場合の限界【2026年版】

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「マイクロ法人に税理士って、そもそも必要なの?」
「頼むと年いくらかかる?格安のところは大丈夫?」
「自分でやれるなら、その方が節約になるのでは?」

この記事はその3つに答えるためのものです。話を進める前に前提をそろえておくと、本記事で扱うマイクロ法人とは、個人事業を続けている人が、役員を自分ひとりだけにした小さな会社(実務では合同会社が選ばれやすく、株式会社でも構いません)をもう一つ持ち、その会社からの役員報酬をあえて低めに固定することで、社会保険料の負担を軽くする「マイクロ法人スキーム」の器を指します。スキーム全体の仕組みと数字の考え方はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説にまとめてあります。

私は現役のマイクロ法人社長で、設立から今まで「顧問なし」「スポット」「顧問あり」のすべてを経験しました。その実感を踏まえ、税理士の要否を場合分けして整理します。この記事でわかることは次のとおりです。

  • 税理士なしで回せるかどうかが変わる3つのフェーズ
  • 顧問なし・スポット決算・月次顧問それぞれの費用の目安
  • 「格安」をうたう事務所を選ぶときに確認すべき点
  • 自分でやる場合に必要なものと、つまずきやすい論点
  • マイクロ法人ならではの、税理士に聞くべき相談ポイント

結論:税理士の要否は「フェーズ」で変わる

「マイクロ法人に税理士は必要か」という問いに、はい・いいえの一言で答えるのは無理があります。同じ会社でも、置かれている段階によって難易度がまるで違うからです。私の感覚では、次の3つのフェーズで分けて考えるのが実務的です。

フェーズ 主な作業 自力の難易度(目安)
設立初年度 会計ソフト設定、役員報酬の決定、初回決算・申告、社保の新規適用 高め(未知の手続きが集中する)
2期目以降(免税事業者) 月次記帳、年1回の決算・申告、算定基礎届 中くらい(前年の写しが効く)
消費税の課税事業者になった後 上記+消費税の集計・申告(インボイス対応含む) 高い(判定と区分が難所)

取引件数が月に数件しかないマイクロ法人であれば、2期目以降は自力でも十分回せるケースがあります。逆に、初年度と消費税が絡んだ年は、専門家の手を借りる価値が跳ね上がります。この見立ては、私が顧問税理士の先生から「一番転びやすいのは1期目と、消費税が始まる年ですよ」と言われた内容とも一致しています。

「取引が少ない=簡単」とは限らない

マイクロ法人は取引件数こそ少ないのですが、法人特有の論点(役員報酬の定期同額、役員貸付金、決算書と申告書の別表の作り方など)は取引件数に関係なく発生します。作業量は少なくても、知識の必要量は普通の法人と大きくは変わらないという点は正直にお伝えしておきます。決算・申告を自力でやる具体的な手順はマイクロ法人の決算・申告は自分でできる?で詳しく書いているので、そちらもあわせてご覧ください。

費用の目安:3つの頼み方とレンジ

税理士への依頼は「全部お願いする」か「まったく頼まない」かの二択ではありません。実際には次の3パターンに分かれ、費用感もかなり違います。金額は事務所・地域・売上規模で変わるため、あくまで2026年時点の目安幅として読んでください。

税理士の頼み方3段階の比較図。自分でやる(会計ソフトで完結)、決算だけ頼む(年に一度スポットで)、顧問契約(毎月みてもらう)。右へ行くほど費用が増え、左へ行くほど手間が多い。
頼む・頼まないの二択ではなく、3段階のグラデーションで考えると自分に合う形が見つかります。
頼み方 年間費用の目安 向いている人
顧問なし(完全自力) 会計ソフト代のみ(年2〜4万円程度) 簿記の基礎があり、学ぶ時間を確保できる人
決算・申告だけスポット 年10万〜20万円台が一つの相場感 記帳は自分でやり、申告書だけ任せたい人
月次顧問+決算 月1万〜3万円台+決算料(月額の4〜6か月分が目安) 相談窓口を常に持ちたい人、時間を買いたい人

マイクロ法人のように売上規模が小さい会社では、「記帳は自分、決算だけスポット」という中間形が費用対効果の面で選ばれやすい印象です。ただし、スポット対応を受けていない事務所もありますし、初回は資料の確認に手間がかかるぶん料金が上がることもあります。

費用を判断するときの考え方

税理士費用が高いか安いかは、金額単体では決まりません。「自分がその作業に何時間かけるか」と「その時間で本業をいくら稼げるか」を並べて考えるのが現実的です。決算作業に毎年40時間かかる人が、時間単価5,000円の仕事を持っているなら、20万円のスポット依頼は決して高くありません。逆に、閑散期に余裕があって学習意欲もあるなら、自力は十分ありえる選択です。

「格安」を選ぶときに見るべき4つのポイント

検索すると「月◯,◯◯◯円〜」という表示をよく見かけます。安さ自体は悪いことではありませんが、比較の土俵をそろえないと後で認識のズレが起きます。私が実際に見積もりを取ったときにチェックした点を挙げます。

① 記帳代行はどこまで含まれるか

「顧問料」に記帳代行が含まれるか、別料金かは事務所によって違います。含まれる場合でも、仕訳件数の上限が設定されていることがあります。マイクロ法人は件数が少ないので有利になりやすい部分です。

② 決算料が別途かかるか

月額が安くても、決算料が月額の数か月分だけ別に必要なケースは一般的です。年額の総支払いに直して比べてください。

③ 面談・相談の方法と回数

完全オンライン・チャットのみ・年1回のみなど、コミュニケーション設計は事務所ごとに大きく異なります。「相談したいときに相談できるか」は、安さと同じくらい効いてきます。

④ 対応してもらえる範囲

法人の申告だけなのか、個人事業の確定申告や年末調整、社会保険関係の相談まで見てもらえるのか。二刀流のマイクロ法人では、個人と法人をセットで見てもらえるかが実は一番重要です。別料金になることも多いので、最初に確認しておきましょう。

自分でやる場合に必要なものと、つまずきやすい論点

「税理士なしでいく」と決めた場合、最低限そろえるべきものは次のとおりです。

  • 法人対応の会計ソフト(決算書だけでなく、法人税の申告書まで作れるかを要確認)
  • 法人税・地方税・(該当すれば)消費税の申告書一式と、e-TaxおよびeLTAXの利用環境
  • 法人設立時の書類一式(定款、登記事項証明書、役員報酬の決議書類など)
  • 役員報酬の議事録と給与支払いの記録(社会保険の届出とも連動します)

そのうえで、つまずきやすいポイントを挙げておきます。

役員報酬の定期同額給与

役員報酬は原則として期首から3か月以内に決め、その後は同額を毎月支払う必要があります。途中で自由に増減させると損金にならない部分が出るおそれがあります。金額の決め方は役員報酬はいくらが最適かで整理しています。

別表の書き方

法人税申告書の別表は、簿記の知識だけでは埋まりません。特に別表四・別表五(一)の調整は、初年度に多くの人が手を止めるところです。

会社と個人のお金の混同

法人の口座から生活費を出してしまうと、役員貸付金として処理が必要になり、以後ずっと残高を管理することになります。二刀流での経費の分け方は二刀流の経費の分け方にまとめました。

マイクロ法人ならではの、税理士に聞くべき相談ポイント

単に「申告書を作ってもらう」だけなら比較的どこでも対応できますが、マイクロ法人スキームには固有の論点があります。相談する際は、次の3点を投げてみると、その事務所の理解度がよくわかります。

  • 役員報酬をいくらに設定するか:社会保険料の等級、法人の利益、個人側の所得のバランスをどう取るか
  • 個人事業と法人の事業をどう分けるか:同じ業種で法人を作ると否認リスクが生じます。論点の全体像はマイクロ法人の否認リスク10論点をご覧ください
  • 経費の按分の考え方:家賃・通信費・車などを、個人と法人でどう配分するのが説明可能か

私が顧問をお願いするときも、この3つへの回答が具体的かどうかで判断しました。「社会保険料の最適化は税務の話ではないので分かりません」と言われる場合もありますが、それはそれで誠実な回答です。その場合は自分で調べる前提で、申告実務だけ任せるという整理もできます。

よくある質問(FAQ)

Q. マイクロ法人でも税務調査は来ますか?

A. 規模が小さくても、法人である以上は調査の対象になり得ます。頻度は一般に大企業より低いとされますが、「小さいから絶対に来ない」ということはありません。帳簿と証憑を整えておくことが最大の備えです。

Q. 税理士に頼めば否認リスクはなくなりますか?

A. なくなるとは言えません。税理士は判断の根拠を整理し、説明できる形にする手助けをしてくれますが、事業の実態そのものを作るのは自分自身です。実態がなければ、誰が申告しても結論は変わりません。

Q. 途中から税理士に切り替えることはできますか?

A. できます。私も1期目は自力、その後にお願いする形にしました。ただし過去の帳簿の作り方に問題があると、引き継ぎ時に修正の手間(と費用)が発生することがあります。早めに相談する方が結果的に安く済むケースもあります。

Q. 個人事業の確定申告と法人の申告、両方頼むと2倍かかりますか?

A. 事務所によりますが、セット料金を設定しているところもあります。二刀流であることを最初に伝えて、総額でいくらになるかを確認してください。

Q. 会計ソフトがあれば税理士は不要ですか?

A. 記帳と決算書作成までは、ソフトでかなりの部分がカバーできます。ただし「この支出は経費として説明できるか」「役員報酬をどう設定するか」といった判断の部分は、ソフトでは代替できません。判断が必要な場面が多い年ほど、専門家の価値が上がります。

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まとめ:全部か無かではなく、頼み方を選ぶ

この記事の要点を整理します。

  • 税理士の要否は「設立初年度/2期目以降/消費税の課税事業者になった後」で大きく変わる
  • 費用の目安は、スポット決算で年10万〜20万円台、月次顧問なら月1万〜3万円台+決算料が一つの相場感
  • 格安を比べるときは、記帳代行の範囲・決算料の別途有無・面談の方法・個人事業まで見てもらえるかを確認する
  • 自力でやるなら法人申告まで対応した会計ソフトが前提。定期同額給与と別表、公私の資金混同が三大つまずきポイント
  • マイクロ法人固有の相談は「役員報酬の設定・事業の分け方・経費の按分」の3点

私自身は、1期目を自力でやってみたことで「どこが難しいか」がわかり、その後の依頼範囲を決めやすくなりました。全部任せるか完全に自力かの二択で悩むより、自分が苦しい部分だけを外注すると考えると、費用も納得しやすくなるはずです。どの形を選ぶにせよ、最終的な判断の前に一度は税理士へ相談してみることをおすすめします。

※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

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