【2026年版】二刀流の経費はどっちに付ける?マイクロ法人と個人事業の家賃・通信費・車の分け方

節税・経費
【2026年版】二刀流の経費はどっちに付ける?マイクロ法人と個人事業の家賃・通信費・車の分け方

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「自宅の家賃、個人事業と法人のどっちの経費にすればいいの?」
「スマホ代とネット代は? 両方の仕事で使ってるんだけど……」
「車を法人名義にしたほうがお得って聞いたけど、本当?」

個人事業主とマイクロ法人の「二刀流」を始めると、ほぼ全員が最初に突き当たるのがこの疑問です。ここで言うマイクロ法人とは、個人事業主が本業とは別に役員一人だけの法人(合同会社が主流、株式会社でも可)を設立し、役員報酬を最小限に抑えることで社会保険料の負担を大きく下げる「マイクロ法人スキーム」で使う器のこと。スキームの全体像や節約額の目安はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説にまとめています。

二刀流では、財布(会計)が個人事業と法人の2つに分かれます。そのため家賃・通信費・車のような「生活と両方の事業にまたがる支出」を、どちらに・いくら経費計上するかという論点が必ず発生します。私も設立当初、顧問税理士の先生に領収書の山を前に同じ質問をしました。この記事では、そのとき教わった考え方をベースに整理します。

  • 経費をどちらに付けるかを決める「大原則」
  • 絶対にやってはいけない二重計上と「経費の付け替え」
  • 家賃(自宅兼事務所)の分け方と、法人に負担させる場合の形式
  • 通信費・水道光熱費・車の実務的な按分方法
  • 迷ったときの実務ルール3か条

大原則:経費は「どちらの事業のために使ったか」で決まる

最初に結論です。経費をどちらに付けるかは、「その支出がどちらの事業のために使われた費用か」という対応関係で決まります。ここに選択の自由はありません。

たとえば個人事業がデザイン業、マイクロ法人が資産運用や不動産賃貸という典型的な二刀流なら、こうなります。

支出の例 付ける先 理由
デザインソフトの利用料 個人事業 デザイン業(個人側の事業)のための費用
証券口座関連の書籍・情報サービス 法人 資産運用(法人側の事業)のための費用
賃貸物件の管理手数料 法人 不動産賃貸(法人側の事業)のための費用
デザインの打ち合わせの交通費 個人事業 個人側の売上に直接対応する費用

「法人のほうが税率が低そうだから法人に付けたい」「個人事業の所得を圧縮したいから個人に付けたい」という"付けたい方に付ける"発想はNGです。事業の中身と費用の対応関係が崩れていると、税務調査で真っ先に突かれます。個人事業と法人でどう事業を分けるかという設計自体は個人事業主との二刀流戦略で詳しく解説しています。

二重計上は論外:同じ領収書を両方で使わない

言うまでもないようで実際に起きがちなのが、同じ領収書を個人事業と法人の両方で経費にしてしまう二重計上です。会計ソフトを2つ使っていると、レシートのスキャンやカード明細の自動取込で意図せず両方に入ってしまうことがあります。これは調査で確実に指摘される類のミスで、故意と見られれば重いペナルティにつながりかねません。領収書は「どちらの帳簿に入れたか」を1枚ずつ確定させ、カードや口座も可能な限り事業ごとに分けるのが自衛策です。

家賃:自宅兼事務所は「二段階」で考える

二刀流で一番質問が多いのが家賃です。自宅兼事務所の場合、考え方は二段階になります。

ステップ1:まず「事業で使う割合」を按分する

家賃全体のうち、事業に使っている部分を面積や使用時間などの客観的な基準で切り出します。たとえば60平米の自宅のうち10平米を仕事部屋として使っているなら、面積基準で約17%が事業利用分、という具合です。生活部分まで経費にすることはできません。

ステップ2:事業利用分を、両事業でさらに配分する

その仕事部屋を個人事業(デザイン業)と法人(資産運用の管理事務など)の両方で使っているなら、事業利用分の中を作業時間の比率などで合理的に配分します。私の場合、顧問税理士の先生から「法人側の事業にどれだけの作業実態があるかを説明できる範囲にとどめるように」と言われ、法人側の配分はかなり控えめにしています。資産運用がメインの法人だと、実際の作業時間は月に数時間ということも珍しくないからです。

法人に家賃を負担させるなら「形式」が必要

もう1つ重要なのが契約の形式です。自宅が個人契約の賃貸なのに、法人が家賃の一部をただ支払うだけの処理は危険です。法人から個人(役員)への金銭の支払いと見られ、役員給与と認定されて損金にならないうえ、個人側に所得税がかかるという最悪の展開があり得ます。法人に負担させたいなら、大家の承諾を得て法人との賃貸借(転貸借)契約を結ぶ、あるいは社宅制度の形式を整えるなど、契約と実態をセットで作る必要があります。役員給与まわりの考え方は役員報酬はいくらが最適かもあわせてご覧ください。

通信費・水道光熱費:実態ベースの按分が基本

スマホ代・ネット回線・電気代なども理屈は同じで、「事業利用分を切り出し、両事業の利用実態で配分する」が基本です。

  • スマホ・ネット回線:事業利用の割合を通話・利用実態から見積もり、さらに両事業で使うなら利用時間等で配分。回線やスマホを事業ごとに分けてしまうのが一番説明しやすい
  • 電気代:仕事部屋の面積比や使用時間をベースに按分。家賃の按分基準とそろえると説明が一貫する
  • 水道・ガス:事業との関連が薄い業種では経費性自体が弱く、無理に計上しないほうが安全

注意したいのは、マイクロ法人側の事業実態が薄いのに費用だけ法人へ寄せるパターンです。法人の経費は売上とのバランスで見られます。年間売上100万円前後の法人に、家賃・通信費・光熱費がぎっしり計上されていて毎期赤字……という決算書は、それ自体が「実態より経費を寄せているのでは」という疑いの入り口になります。法人の維持コストの相場感は合同会社の維持費で整理しています。

車:使う事業で判断。法人名義にするなら実務もセットで

車も原則は同じで、どちらの事業のために使っているかで判断します。デザイン業の打ち合わせや納品に使うなら個人事業側、法人の不動産の現地確認に使うなら法人側です。

法人名義にする場合のチェックポイント

  • 名義変更:車両を法人所有にするなら、売買または現物出資の形で法人へ移し、車検証の名義も変更する
  • 保険:自動車保険の契約者・記名被保険者を法人契約に切り替える(等級の引き継ぎ可否は保険会社に確認)
  • 私用分の按分:法人名義でも私用で使う分は経費にできない。私用分の取り扱いを決めておく

そして両方の事業+私用で1台を使い回すなら、運転日報などの使用記録を残すのが実務の定番です。「いつ・どこへ・どちらの事業のために」の記録があるかないかで、調査時の説得力がまったく違います。面倒に見えますが、スマホのメモやカレンダー転記で十分です。

「経費の付け替え」がとくに危険な理由

ここまでの話をまとめると、二刀流の経費で本当に危ないのは細かい按分割合の誤差ではなく、「経費の付け替え」で所得を操作することです。

たとえば、個人事業の所得が増えてきたからといって、本来個人事業に対応する費用をマイクロ法人へ意図的に寄せる。あるいは法人を赤字にしたくないからと、法人の費用を個人へ移す。こうした操作は、同族会社の行為計算否認や実態否認の格好の標的になります。マイクロ法人スキームはただでさえ「社会保険料の負担を意図的に下げる設計」として当局に注目されやすい構造です。そこに恣意的な経費操作が加わると、スキームそのものの実態を疑われるリスクが跳ね上がります。マイクロ法人が否認され得る論点の全体像はマイクロ法人の否認リスク10論点で詳しく解説しています。

顧問税理士の先生の言葉を借りれば、「按分割合が2割か3割かはまだ議論の余地がある。でも、対応関係のない経費を別の財布に付け替えるのは議論の余地がない」。この線引きを覚えておくだけで、危ない橋はだいたい避けられます。

迷ったときの実務ルール3か条

最後に、私が実際に使っている判断ルールを3つにまとめます。

  • ① 契約名義とお金の流れを一致させる:法人の経費は法人契約・法人口座から、個人事業の経費は個人側から支払う。名義と支払いが揃っていれば、説明の8割は終わっている
  • ② 按分根拠をメモで残す:面積図、作業時間の記録、運転日報など、「なぜこの割合か」を後から示せる形で残す。決めた基準は毎期コロコロ変えない
  • ③ グレーは自己判断せず税理士に相談する:家賃の法人負担や車の名義変更のような「形式づくり」が必要な論点は、着手前に相談する。事後の修正は高くつく

よくある質問(FAQ)

Q. 按分割合に「正解」はありますか? 何%までなら安全ですか?

A. 法令で一律に決まった割合はありません。重要なのは数字そのものより根拠(面積・時間などの客観的基準)を示せることです。逆に根拠なく「とりあえず50%」のような計上は、割合が小さくても弱い処理になります。

Q. 個人のクレジットカードで法人の経費を払ってしまいました。もう経費にできませんか?

A. 立替払いとして処理し、法人から精算すれば経費にできます。ただし常態化すると財布の混同そのものが問題視されやすいので、法人カード・法人口座を作って支払い元から分けるのが根本対策です。

Q. 法人側の事業がほぼ資産運用だけです。家賃や通信費を法人に計上できますか?

A. 計上できるのは、あくまでその事業の遂行に対応する実態がある範囲です。運用の管理作業が月数時間なら、計上できる按分もそれに見合う小さな割合にとどまるのが自然です。売上規模に対して経費が過大な決算が続くと否認リスクが高まります。

Q. 夫婦で個人事業と法人を分担しています。経費の考え方は変わりますか?

A. 大原則(どちらの事業のための費用か)は同じです。ただし家族間だと財布の混同がさらに起きやすいので、契約名義・支払口座の分離をより厳格にしておくことをおすすめします。

Q. 二刀流の経理を全部自分でやるのが不安です。

A. 二刀流は帳簿が2セットになるぶん、経費の振り分けミスも起きやすくなります。判断に迷う支出が多い業態なら、法人側だけでも税理士に見てもらう価値はあります。費用対効果は法人の維持費全体(合同会社の維持費参照)と合わせて検討してみてください。

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まとめ:経費の行き先は「対応関係」が決める。付け替えだけは絶対にしない

二刀流の経費の分け方を振り返ります。

  • 経費はどちらの事業のために使った費用かという対応関係で決まる。付けたい方に付けるのはNG
  • 同じ領収書の二重計上は論外。カード・口座を分けて物理的に防ぐ
  • 家賃は「事業利用分の切り出し→両事業への配分」の二段階。法人負担には契約・社宅の形式が必要
  • 通信費・光熱費・車は実態ベースの按分と記録。法人の売上規模とのバランスにも注意
  • 経費の付け替えによる所得操作は、同族会社の行為計算否認・実態否認の標的になる

二刀流の経費管理は、細かいテクニックより「名義・お金の流れ・記録をそろえる」という地味な作業の積み重ねです。逆に言えば、そこさえ整えておけば過度に怖がる必要はありません。迷う支出が出てきたら、その都度メモを残し、グレーなものは顧問税理士に確認しながら進めてください。

※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

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