【2026年版】一人だけのマイクロ法人で福利厚生費は使える?「全従業員が対象」要件の壁と現実的な範囲

節税・経費
【2026年版】一人だけのマイクロ法人で福利厚生費は使える?「全従業員が対象」要件の壁と現実的な範囲

📢 本記事にはプロモーション(広告・アフィリエイトリンク)が含まれます。

スポンサーリンク

「福利厚生費って、社員旅行や食事補助を経費にできるやつでしょ?」
「でも従業員が自分ひとりのマイクロ法人でも使えるの?」
「健康診断やスポーツジムの会費も福利厚生になる?」

先に前提を置いておきます。この記事で言うマイクロ法人とは、個人事業を続けながら、役員が自分ひとりだけの小さな会社(実務では合同会社が多く、株式会社でも構いません)を別に立ち上げ、役員報酬を低めに抑えることで社会保険料の負担を軽くする仕組みのことです。従業員を雇わず、役員が自分だけ、というのがマイクロ法人の典型的な形ですが、この「一人だけ」という点が、福利厚生費では大きな壁になります。スキーム全体の設計思想はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説で詳しく解説しています。

私も現役のマイクロ法人社長ですが、「福利厚生費でジムに通える」という話を鵜呑みにしそうになったとき、顧問税理士の先生に「一人の会社だと、福利厚生費の考え方が普通の会社とは違ってくるんですよ」と釘を刺されました。この記事では、その理由と、それでも現実的に使える範囲を整理します。

  • 福利厚生費の大原則「全従業員が対象」という要件
  • 役員一人の会社で認められにくい費目・認められうる費目
  • 給与課税・現物給与とみなされるリスクの線引き
  • 規程の整備と、証拠の残し方

福利厚生費の原則:「全従業員が対象」であること

福利厚生費とは、会社が従業員の福利厚生のために支出する費用のことです。社員旅行、食事補助、慶弔費、健康診断などが代表例で、一定の要件を満たせば会社の経費(損金)になり、受け取る側にも給与課税されないという扱いになります。

ここで最も大切な原則が、「全従業員を対象とした、機会の均等なもの」であることです。特定の人だけが恩恵を受けるものは、福利厚生ではなく、その人への給与(報酬)とみなされてしまいます。会社全体の制度として、誰もが同じように利用できることが前提になっているのです。

福利厚生費の主な要件 意味
全従業員が対象 特定の人だけでなく、機会が均等に開かれている
金額が社会通念上妥当 常識的な範囲を超えて高額でない
現物給与に当たらない 実質的に個人への報酬・給付になっていない

役員一人の会社で「壁」になる理由

この「全従業員が対象」という原則を、役員が自分ひとりだけのマイクロ法人に当てはめてみましょう。従業員がいない会社では、福利厚生の対象になるのは実質的に社長本人だけです。すると、「全従業員のための制度」ではなく「社長個人のための支出」と見られやすくなります。

さらにややこしいのが、社長は「従業員」ではなく「役員」である点です。福利厚生費の考え方は、そもそも従業員のための制度を想定しているため、役員だけが恩恵を受ける支出は、より一層「役員への給与(役員賞与など)」と判断されやすくなります。役員賞与は原則として損金になりにくいため、経費として認められないうえに、個人側では給与課税されるという二重に不利な扱いになりかねません。

だからこそ、一人社長が「福利厚生費でジムに通う」「福利厚生費で豪華な社員旅行に行く」といった話をそのまま実行するのは危ういのです。従業員を雇った場合に何が変わるかは従業員を雇うとどうなる?で整理していますが、逆に言えば「一人だけ」という状態が、福利厚生費を難しくしている最大の理由だと言えます。

一人でも比較的使いやすい費目・使いにくい費目

とはいえ、一人社長だからといって福利厚生的な支出がまったくできないわけではありません。費目によっては、事業のために必要な支出として整理できるものもあります。ここでは目安として、比較的使いやすいものと、使いにくいものを分けて考えます。

費目 一人社長での扱いの目安
健康診断・人間ドック 会社が加入者の健康管理として実施する形なら、比較的整理しやすい費目
常備薬・救急用品 事業所に備える少額なものは、消耗品として扱える場合がある
スポーツジムの会費 個人的な利用色が強く、給与課税とみなされやすい
豪華な社員旅行 実質的に社長の私的旅行と見られやすく、認められにくい
高額な食事補助 金額や実態次第で現物給与とされるリスクが高い

健康診断は一人でも整理しやすい

健康診断や人間ドックは、経営者の健康管理という事業上の必要性を説明しやすく、一人社長でも比較的整理しやすい費目とされています。ただし、これも「常識的な範囲の内容・金額であること」「会社の制度として実施していること」が前提です。マイクロ法人での健康診断の扱いはマイクロ法人の健康診断の考え方で詳しく扱っていますので、実際に検討する際はあわせて確認してください。

ジム会費・社員旅行は慎重に

一方、スポーツジムの会費や社員旅行は、一人社長だと「個人的な娯楽・趣味」との線引きが難しく、給与課税とみなされやすい費目です。「福利厚生費だから大丈夫」と安易に処理せず、迷ったら経費に入れない判断も検討したほうが安全です。退職金や企業型DCといった、制度としてより整理された仕組みはマイクロ法人の退職金・企業型DCの考え方で扱っています。

給与課税・現物給与とみなされるリスク

福利厚生費で最も怖いのが、税務調査で「これは福利厚生ではなく、実質的に社長への給与ですね」と判断されることです。そうなると、その支出は損金として認められないうえ、社長個人には現物給与として所得税・住民税が課され、社会保険料の算定にも影響する可能性があります。マイクロ法人はせっかく社会保険料を抑える設計にしているのに、福利厚生費のつもりの支出で標準報酬月額が上がってしまっては本末転倒です。

判断のポイントは、結局のところ「特定の個人(社長)への経済的な利益になっていないか」です。会社の制度として合理的で、金額も常識的で、事業との関連が説明できる。この3点がそろわない支出は、福利厚生費として無理をしないほうが安全だと私は考えています。経費全般の線引きの考え方はマイクロ法人の経費はどこまで認められるかで整理していますので、そちらもあわせてご覧ください。

規程の整備と証拠の残し方

福利厚生的な支出をする場合は、「会社の制度として実施している」ことを示すために、最低限の整備をしておくと説明がしやすくなります。

  • 福利厚生規程:どんな福利厚生を、誰を対象に、どの範囲で実施するかを定めた社内ルール
  • 実施の記録:健康診断の受診記録、支出の目的を書いたメモなど
  • 領収書・請求書:金額・内容がわかるもの
  • 金額の妥当性の根拠:世間一般の水準と大きくかけ離れていないこと

もっとも、規程さえ作れば何でも福利厚生費になるわけではありません。規程は「制度として運用している」ことを示す材料の一つであって、実態が伴っていなければ意味がない、という点は押さえておいてください。判断に迷う支出ほど、事前に顧問税理士へ確認しておくのが結局いちばんの近道です。

私の実感としては、一人社長のマイクロ法人で福利厚生費に力を入れようとすると、労力のわりに認められる範囲が狭く、費用対効果が合わないことが多いように思います。顧問税理士の先生からも「福利厚生費であれこれ工夫するより、まずは経費として素直に説明できる支出をきちんと積み上げ、老後資金は小規模企業共済やiDeCoのような制度で確保するほうが、リスクが小さくて効果もはっきりしますよ」と言われました。福利厚生費は、無理に広げようとするほど給与課税のリスクが増える費目です。あくまで健康診断など整理しやすいものに絞り、それ以外は別の制度で代替できないかを先に考える、という順番のほうが、結果として安心して運用できると感じています。

よくある質問(FAQ)

Q. 従業員が自分ひとりでも福利厚生費は使えますか?

A. 使える費目もありますが、大きく制限されます。福利厚生費は「全従業員が対象」であることが原則のため、対象が社長ひとりだと「役員個人への給与」とみなされやすくなります。健康診断など整理しやすい費目に絞り、無理はしないのが安全です。

Q. 福利厚生費でスポーツジムに通えますか?

A. 一人社長の場合、個人的な利用色が強く、現物給与として給与課税されるリスクが高い費目です。「福利厚生費だから経費」と安易に処理せず、慎重に判断することをおすすめします。

Q. 健康診断は経費にできますか?

A. 経営者の健康管理という事業上の必要性を説明しやすく、比較的整理しやすい費目とされています。ただし常識的な内容・金額で、会社の制度として実施していることが前提です。具体的な扱いは税理士にご確認ください。

Q. 福利厚生規程を作れば何でも経費にできますか?

A. できません。規程は「制度として運用している」ことを示す材料の一つにすぎず、実態が伴わなければ意味がありません。特定の個人への利益になっている支出は、規程があっても福利厚生費とは認められにくいです。

💡 福利厚生費の線引きをプロに確認しながら進めたいなら(PR)

「ゼロ税理士法人」なら月3,980円〜で経理・税務をまるごと丸投げできます。法人・個人事業主どちらもOK、最短で即日スタート、まずは無料オンライン相談から。自分でやる時間と比べて、コストが見合うか検討する価値があります。

▶ 月3,980円〜で税理士に丸投げする(ゼロ税理士法人)

まとめ:一人社長の福利厚生費は「対象者」の壁を前提に考える

この記事の要点を整理します。

  • 福利厚生費は「全従業員が対象」であることが大原則
  • 役員一人の会社では、社長個人への給与とみなされやすく、使える範囲が狭い
  • 健康診断など事業上の必要性を説明しやすい費目は、比較的整理しやすい
  • ジム会費や豪華な社員旅行は、現物給与とされるリスクが高い
  • 規程と実態の両方がそろって初めて説明できる。迷ったら税理士へ

福利厚生費は、従業員がいる会社を前提にした制度です。一人社長のマイクロ法人では、その恩恵を素直に受けるのは難しく、「福利厚生費だから経費になる」という言葉をそのまま当てはめると、思わぬ給与課税につながることがあります。使える費目を見極めつつ、無理はしない。この姿勢が結果的に安全だと考えています。

※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

スポンサーリンク

スポンサーリンク