【2026年版】法人の決算書の見方|マイクロ法人社長が貸借対照表と損益計算書のどこを見るか

確定申告・税務調査
【2026年版】法人の決算書の見方|マイクロ法人社長が貸借対照表と損益計算書のどこを見るか

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「決算書が出てきたけど、どこを見ればいいの?」
「貸借対照表と損益計算書って何が違うの?」
「自分の会社の数字が変じゃないか、自分で判断できるようになりたい」

先に前提を整理します。この記事で言うマイクロ法人とは、個人事業を続けながら、役員が自分ひとりだけの小さな会社(多くは合同会社、株式会社でも可)を別に持ち、役員報酬を低めに設定することで社会保険料の負担を抑える仕組みのことです。全体像はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説をご覧ください。

決算書は税理士や税務署のためだけの書類ではありません。自分の会社の状態を映した鏡です。とはいえ全部を読み解く必要はなく、一人社長が見るべき場所は限られています。

  • 2つの表の役割の違い
  • マイクロ法人ならではの見どころ
  • 数字が不自然に見える典型パターン
  • 融資や審査で見られる箇所

2つの表は「時点」と「期間」の違い

まず、決算書の中心になる2つの表の違いを押さえます。

書類 何を表すか たとえるなら
貸借対照表(BS) 決算日の時点で、何を持ち何を負っているか その日の記念写真
損益計算書(PL) 1年間でいくら稼ぎ、いくら使ったか 1年間の動画

この違いを押さえるだけで、決算書はぐっと読みやすくなります。「時点」の話をしているのか「期間」の話をしているのかを意識してください。毎月の試算表も同じ構造なので、月次で見慣れておくと決算書も自然に読めます。月次の見方は月次試算表の読み方で解説しています。

貸借対照表で見る3か所

マイクロ法人の貸借対照表は項目が少ないので、見るところも絞れます。

①現預金

決算日時点の会社のお金です。実際の口座残高と一致していなければ、どこかに処理の誤りがあります。ここが合っていることが、決算書全体の信頼性の土台になります。

②預り金

役員報酬から差し引いた源泉所得税や社会保険料の本人負担分のうち、まだ納めていない分です。正常なら「1か月分程度」に収まります。

何か月分も積み上がっているなら、納付が漏れているか、納付時の処理が漏れています。この確認方法は社会保険料の仕訳はどうする?で扱っています。

③繰越利益剰余金

設立から今までに積み上がった利益の累計です。赤字が続いていればマイナスになります。マイクロ法人は利益を大きく残さない運用も多いため、ここが小さいこと自体は問題ではありません。

ただし、マイナスが大きく膨らんでいる(債務超過に近づいている)場合は、融資や取引の場面で見られる可能性があります。会社の体力を示す数字として、毎期の推移だけは把握しておくとよいでしょう。

損益計算書で見る3か所

こちらも見るところは絞れます。

  • 売上高:1年間でいくら稼いだか。継続して立っているか
  • 役員報酬と法定福利費:マイクロ法人の費用の中心
  • 最終的な利益:納税額の元になる数字

マイクロ法人で特徴的なのは、費用の大半が役員報酬と法定福利費で占められる点です。他の会社と比べて、家賃や人件費といった項目が薄く、この2つが目立ちます。これは構造上そうなるもので、異常ではありません。

売上がゼロの期は要注意

一方で、売上がまったく立っていない期が続くのは望ましくありません。マイクロ法人スキームは、法人が独立した事業として成り立っていることが前提です。決算書の売上高は、その実態を示す数字でもあります。この論点はマイクロ法人は「実態なし」と言われない?で詳しく扱っています。

不自然に見える典型パターン

自分でチェックするときに見ておきたい、よくあるパターンを挙げます。

症状 考えられる原因
現預金が口座と合わない 取り込み漏れ、または二重計上
預り金が何か月分も残っている 納付漏れ、または納付時の処理漏れ
役員貸付金が計上されている 会社のお金で私的支出をしている
費用が前期より急に増えた 二重計上、または按分の漏れ
売掛金が長く残っている 入金の消し込み漏れ、または未回収

とくに役員貸付金は、金額が大きいと融資審査などで不利に働くことがあります。決算書に載っていることに気づいたら、内容を確認して整理してください。詳しくは役員貸付金・お金の分け方を参照してください。二重計上の原因の探し方は入出金が二重に計上される原因と直し方で扱っています。

外部の人が見る箇所

決算書は、自分だけが見るものとは限りません。次のような場面で提示を求められることがあります。

  • 融資を受けるとき:金融機関が会社の返済力を見る
  • 取引先が与信を確認するとき:継続的に取引できる相手かを見る
  • 賃貸や各種契約のとき:会社としての実体を見る

このとき見られやすいのが、売上高・利益・繰越利益剰余金・役員貸付金のあたりです。マイクロ法人は役員報酬を低くしているため、個人の収入証明だけでは説明が難しい場面があります。会社としての決算書がきちんとしていることが、その補いになることもあります。審査まわりの実情は役員報酬4.5万円の社長は住宅ローン・賃貸・クレカ審査に通る?で扱っています。

読めるようになると経営判断が変わる

決算書が読めると、翌期の設計に使えるようになります。たとえば次のような判断です。

  1. 利益が想定より出ている→ 翌期の役員報酬の水準を検討する
  2. 現預金が薄い→ 納税資金の確保を優先する
  3. 売掛金が滞留している→ 取引条件や請求のタイミングを見直す

1つ目については、期の途中で役員報酬を動かすと税務上の扱いが変わるため、翌期の話として考えるのが基本です。詳しくは役員報酬は途中で変更できる?をご覧ください。

全部を理解しようとしない

最後に現実的な話をしておきます。決算書には、一人社長には縁のない項目もたくさん並びます。それらを理解しようとして挫折するより、自分の会社で数字が動く場所だけを覚えるほうが実用的です。

マイクロ法人で動くのは、現預金・預り金・売掛金・役員報酬・法定福利費・利益くらいのものです。この6つだけ毎期眺めていれば、会社の状態はつかめます。慣れてくると、決算書を見た瞬間に「今期はこうだったな」とわかるようになります。

決算書は「毎年並べる」と意味が出る

決算書は1期だけ見てもわかることが限られます。2期、3期と並べて初めて傾向が見えます

  • 売上高の推移:事業が続いているか、伸びているか
  • 利益の推移:報酬設計が今の規模に合っているか
  • 現預金の推移:会社にお金が残っているか

とくにマイクロ法人では、売上が継続して立っていることが実態の裏づけになります。金額の大小より「途切れていないか」を見てください。

私は決算が終わるたびに、この3つの数字だけを1行ずつ書き足したメモを作っています。3期分並ぶと、自分の会社がどう動いてきたかが一目でわかります。決算書そのものを読み返すより、この3行のほうが実用的だと感じています。

勘定科目内訳明細書も見ておく

法人の申告では、決算書のほかに勘定科目の内訳を示す書類を作ることがあります。これは「売掛金の中身は誰への請求か」「未払金の相手は誰か」を一覧にしたものです。

一人社長の会社なら、載る件数はごくわずかです。ただしここに載る内容は、そのまま「説明を求められたときの答え」になります。役員貸付金や、内容のわからない残高がここに出てくると、目に留まりやすくなります。

逆に言えば、日々の記帳で残高に説明がついていれば、この書類も自然に埋まります。決算の進め方は決算、自分でやる範囲と税理士に頼む範囲を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 貸借対照表と損益計算書はどちらを先に見ればいいですか?

A. どちらでも構いませんが、まず貸借対照表の現預金が口座残高と一致しているかを見るのがおすすめです。ここが合っていれば、決算書全体の信頼性の土台ができます。

Q. 繰越利益剰余金がマイナスです。まずいですか?

A. 赤字が積み上がっている状態ですが、それ自体がただちに問題というわけではありません。ただし大きく膨らむと融資や取引の場面で見られる可能性があるため、推移は把握しておいてください。

Q. 費用が役員報酬と社会保険料ばかりです。おかしいですか?

A. マイクロ法人では構造上そうなります。他の会社と比べて人件費や家賃の項目が薄いのは自然なことなので、心配は要りません。

Q. 役員貸付金が載っていました。どうすればいいですか?

A. 会社のお金で私的な支出をしている状態です。内容を確認し、会社へ返す形で整理してください。金額が大きいと融資審査などで不利に働くことがあります。

Q. 決算書は自分で読めるようになる必要がありますか?

A. 全部を理解する必要はありません。現預金・預り金・売掛金・役員報酬・法定福利費・利益の6つを毎期見るだけで、会社の状態はつかめます。

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日々の記帳を積んでおけば、決算書は自動で作られます。毎月の試算表で同じ場所を見ておけば、決算書も特別なものではなくなります。

まとめ:見る場所は6つでいい

この記事の要点を整理します。

  • 貸借対照表は「決算日の時点」、損益計算書は「1年間の期間」を表す
  • BSは現預金・預り金・繰越利益剰余金の3か所
  • PLは売上高・役員報酬と法定福利費・利益の3か所
  • 役員貸付金や売掛金の滞留は、載っていたら内容を確認する
  • 全部を理解しようとせず、動く場所だけ覚える

決算書は、税務署に出すための書類であると同時に、自分の会社を1枚で説明してくれる資料でもあります。見る場所さえ決めておけば、毎期数分で状態を把握できます。

※本記事は2026年8月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

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