【2026年版】年金受給者がマイクロ法人を持つメリットと注意点|在職老齢年金・役員報酬との関係を解説

法人設立
【2026年版】年金受給者がマイクロ法人を持つメリットと注意点|在職老齢年金・役員報酬との関係を解説

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「年金をもらいながらマイクロ法人の役員になったら、年金は減ってしまうの?」
「役員報酬を低くすれば影響は小さいって本当?」
「そもそも年金受給者がマイクロ法人を持つ意味はあるの?」

受給が始まってから会社を持つ場合、現役世代とは別の論点が出てきます。話を進める前に前提をそろえておくと、本記事でいうマイクロ法人とは、個人事業などを続けている人が、役員を自分ひとりだけにした小さな会社(多くは合同会社、株式会社でも可)を別に持ち、その会社からの役員報酬をあえて低く固定することで、社会保険料の負担を抑える「マイクロ法人スキーム」の受け皿を指します。スキーム全体の数字と仕組みはマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説にまとめてあります。

私は現役のマイクロ法人社長で、年金世代の知人から同じ相談を何度か受けました。顧問税理士の先生にも確認しながら整理した内容を共有します。

  • 年金受給中に法人役員になると何が変わるのか
  • 在職老齢年金の仕組みと、役員報酬を低くしたときの影響
  • 健康保険・後期高齢者医療との関係で気をつける点
  • 年金受給者がマイクロ法人を持つメリット・向かないケース
  • 手続きと事前に確認しておきたいこと

年金受給中に法人役員になると何が変わる?

年金を受け取りながら会社の役員になり、その会社から役員報酬を受け取ると、いくつかの制度が同時に動きます。ポイントは、報酬を受け取ることで厚生年金に加入する立場になり得る点と、その報酬額によっては老齢厚生年金の一部が支給停止になる仕組み(在職老齢年金)が関わる点です。

逆に言えば、マイクロ法人は役員報酬を低めに設定するのが基本方針なので、これらの影響が小さく収まりやすいという特徴があります。ここが、高い役員報酬を取る一般的な現役社長とは事情が異なるところです。

まず「何歳か」で前提が変わる

年金といっても、老齢厚生年金・老齢基礎年金・後期高齢者医療など、年齢や制度で扱いが変わります。65歳前後、75歳前後で見るべきポイントが移っていくため、「自分は今どの区分にいるのか」を最初に確認しておくと、話が整理しやすくなります。定年後に会社を設立する場合の全体像は定年後に会社を設立する完全ガイドでも扱っています。

在職老齢年金の仕組みと、役員報酬の関係

役員報酬の水準と在職老齢年金の関係。役員報酬が低めなら報酬と年金の合計が基準に届かず支給停止が生じにくい。高めなら合計が基準を超えて老齢厚生年金の一部が支給停止になり得る
役員報酬をどの水準に設定するかで、老齢厚生年金の支給に影響が出る可能性があります(基準額は改正されることがあるため最新情報をご確認ください)

在職老齢年金は、働きながら老齢厚生年金を受け取る人について、報酬(給与・賞与の水準)と年金額の合計が一定の基準を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になるという仕組みです。基準額は制度改正で見直されることがあり、近年は引き上げの方向で調整されてきました。具体的な最新の基準額は、日本年金機構など公式情報で確認するのが確実です。

ここで大切なのは、支給停止の対象になるのは老齢厚生年金の部分であって、老齢基礎年金(いわゆる国民年金部分)は在職老齢年金による調整の対象外とされている点です。役員報酬を低く抑えるマイクロ法人では、報酬水準が基準に届かず、支給停止が生じない、あるいは影響が小さく収まるケースが多いと考えられます。

役員報酬の水準 在職老齢年金への影響(考え方)
低め(マイクロ法人の一般的な設定) 報酬+年金の合計が基準に届かず、支給停止が生じにくい
高め 合計が基準を超えると老齢厚生年金の一部が支給停止になり得る

顧問税理士の先生からは「年金世代でマイクロ法人を使う場合は、支給停止を避ける観点からも報酬を低く保つ設計が噛み合いやすい」という趣旨の話を聞きました。ただし基準額や計算方法は改正の影響を受けるため、実際の判断は最新情報での確認が前提です。役員報酬の決め方そのものは役員報酬はいくらが最適かで整理しています。

報酬を上げるほど得とは限らない

「せっかく会社を持つなら報酬も多めに」と考えると、在職老齢年金の支給停止・社会保険料の増加・税負担がまとめて効いてきて、手取りの伸びが鈍ることがあります。年金世代のマイクロ法人は、報酬を欲張らずに設計するほうが、制度との相性が良くなりやすい構図です。

健康保険・後期高齢者医療との関係

医療保険についても、年齢によって加入する制度が変わります。おおまかには、75歳になると多くの人が後期高齢者医療制度へ移る流れになります。ここで注意したいのは、後期高齢者医療の対象になった後は、会社で健康保険(協会けんぽ等)に加入するという形が取りにくくなる点です。

  • 75歳前:役員報酬を受け取り厚生年金・健康保険に加入することで、国民健康保険から切り替えられるケースがある。国保が高い人の負担軽減は国民健康保険が高すぎるで扱っています
  • 75歳以降:後期高齢者医療制度が中心になり、健康保険による社保削減という発想は当てはまりにくくなる

つまり、マイクロ法人による社会保険料の圧縮メリットは、年齢が上がると医療保険の面では薄れていく、という現実があります。「何歳の時点で、どのメリットを狙うのか」を切り分けて考えることが大切です。

年金受給者がマイクロ法人を持つメリット・向かないケース

ここまでを踏まえて、向き・不向きを整理します。断定はできませんが、判断の目安として使ってください。

メリットが出やすいケース

  • 継続したい事業があり、法人として受ける方が実態に合う(顧問業・執筆・コンサルなど)
  • 75歳前で、国民健康保険の負担が重く、社保への切替メリットが見込める
  • 役員報酬を低く保てるため、在職老齢年金の支給停止をほぼ気にせず運用できる
  • 経費計上や所得分散など、法人ならではの整理をしたい

向かない・慎重に考えたいケース

  • 事業の実態がなく、社保対策だけを目的にしている(実態がないと否認リスクがある。論点は否認リスク10論点を参照)
  • すでに後期高齢者医療の対象で、健康保険の切替メリットが見込みにくい
  • 設立・維持のコストや手間に対して、得られる効果が小さい

将来の年金額そのものへの影響が気になる方は、将来の年金は減る?もあわせて読むと、報酬を低くすることの長所・短所が立体的に見えてきます。

手続きと事前に確認しておきたいこと

実際に進める場合の流れは、基本的には通常の設立と同じです。ただし年金世代ならではの確認事項があります。

  • 自分の老齢厚生年金の額と、報酬を受けたときの支給停止の見込み(年金事務所で試算相談ができます)
  • 健康保険をどの制度で受けるのが有利か(年齢・現在の保険料負担で変わる)
  • 事業の実態をどう作るか(契約・請求・記帳などの積み重ね)
  • 設立・維持コストと効果のバランス(維持費は合同会社の維持費を参照)

私の知人は、設立前に年金事務所へ相談して「この報酬水準なら支給停止は生じない見込み」と確認してから動いていました。制度が絡む判断は、思い込みで進めず、公式窓口や専門家で裏を取るのが安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 年金をもらいながら役員報酬を受け取ると、年金は必ず減りますか?

A. 必ず減るわけではありません。減る可能性があるのは在職老齢年金の対象となる老齢厚生年金の部分で、報酬と年金の合計が基準を超えた場合です。役員報酬を低く抑えれば、影響が生じないケースが多いと考えられます。最新の基準額は公式情報で確認してください。

Q. 老齢基礎年金(国民年金)も支給停止になりますか?

A. 老齢基礎年金は在職老齢年金による調整の対象外とされています。支給停止が関わるのは老齢厚生年金の部分です。

Q. 75歳を過ぎても社会保険料の節約メリットはありますか?

A. 医療保険は後期高齢者医療制度が中心になるため、健康保険の切替による削減という発想は当てはまりにくくなります。メリットの中心は事業運営・経費・所得整理の面に移っていくと考えられます。

Q. 事業の中身がなくても、年金対策のために作れますか?

A. 事業実態がないまま社保・年金対策だけを狙うのはおすすめできません。実態を伴わない法人は否認リスクを抱えます。続けたい事業があることが前提です。

Q. 設立前に年金の影響を確認する方法はありますか?

A. 年金事務所で在職老齢年金の試算相談ができます。自分の年金額と想定報酬を伝えれば、支給停止の見込みを確認しやすくなります。

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まとめ:報酬を低く保つ設計が制度と噛み合いやすい

この記事の要点を整理します。

  • 年金受給中に役員報酬を受け取ると、厚生年金加入や在職老齢年金の仕組みが関わってくる
  • 支給停止の対象は老齢厚生年金の部分で、老齢基礎年金は対象外とされている
  • 役員報酬を低く抑えるマイクロ法人は、支給停止の影響が小さく収まりやすい
  • 75歳以降は後期高齢者医療が中心となり、健康保険の切替メリットは薄れていく
  • 続けたい事業があることが前提。基準額や試算は公式窓口・税理士で確認する

年金世代のマイクロ法人は、「報酬を欲張らない」という基本方針が制度との相性を高めてくれます。とはいえ、在職老齢年金の基準や医療保険の扱いは年齢・改正で動くため、始める前に年金事務所や税理士へ一度確認しておくと安心です。

※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。

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