【2026年版】マイクロ法人で将来の年金は減る?厚生年金“最低等級”の影響と3つの補い方
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「マイクロ法人で保険料を下げると、将来の年金が減るんじゃないの?」
「最低等級の厚生年金って、もらうときいくらになるの?」
「目先の保険料を節約して、老後に後悔しない?」
マイクロ法人スキームを検討する人が最後に必ず立ち止まるのが、この「将来の年金」問題です。私自身、設立前に一番時間をかけて考えたのがここでした。そして顧問税理士の先生と整理してわかったのは、「減る/減らない」は比較する相手によって答えが変わる、ということです。この記事では、その比較軸を丁寧にほどいたうえで、削減した保険料で将来に備える現実的な方法までまとめます。
前提として、マイクロ法人とは、個人事業主が役員一人だけの法人(合同会社が主流、株式会社でも可)を別に設立し、役員報酬を最小限に設定して社会保険料の負担を大幅に抑える「マイクロ法人スキーム」の器となる会社のことです。スキーム全体の仕組み・年間の節約額の目安・税務上のリスクはマイクロ法人 社会保険料削減スキームの解説記事を先にご覧ください。
この記事では、現役のマイクロ法人社長として、また顧問税理士の先生から教わった内容をベースに、
- 「年金が減る」が正しい場合と正しくない場合(比較軸の整理)
- 厚生年金の報酬比例の仕組みと、最低等級の将来受取イメージ
- 国民年金のみ vs 最低等級厚生年金の比較
- 削減した保険料の差額を自分で運用する発想
- 補い方3つ(iDeCo・小規模企業共済・NISA)の位置づけ
- このスキームが向く人・向かない人
を、数字の創作を避けつつ、考え方の骨格がわかるレベルまで解説します。
結論:「誰と比べるか」で答えが変わる
最初に結論を示します。マイクロ法人スキームで将来の年金が「減る」かどうかは、比較対象が誰かで答えが逆転します。
| 比較対象 | マイクロ法人(最低等級)との比較 |
| 会社員時代の自分(高い標準報酬で厚生年金) | 減る。報酬比例部分の積み上がりが小さくなる |
| 国民年金だけの個人事業主のままの自分 | むしろ増える側面がある。2階部分(報酬比例)がゼロから僅かでもプラスになる |
「マイクロ法人にすると年金が減る」という言説は、暗黙に会社員(高めの標準報酬)を基準にしています。しかしマイクロ法人スキームを検討する人の多くはすでに個人事業主・フリーランス、つまり国民年金(1階部分)だけの人です。その人が最低等級でも厚生年金に加入すれば、これまで存在しなかった2階部分(報酬比例)が新たに積み上がり始める——ここがこの問題の核心です。
つまり正確な表現はこうです。「会社員と比べれば小さいが、個人事業主のままと比べれば年金は増える方向。そのうえ毎年の保険料負担は大きく減る」。この整理を頭に置いて、以下の各論を読んでください。
おさらい:厚生年金は「報酬比例」で決まる2階建て
日本の公的年金は2階建てです。
- 1階:国民年金(老齢基礎年金):加入期間(最大40年)だけで決まる定額。満額で年80万円台前半が目安(年度改定あり。最新額は日本年金機構の公式で確認を)
- 2階:厚生年金(報酬比例部分):現役時代の標準報酬の平均 × 一定の乗率 × 加入月数でおおむね決まる。報酬が高いほど・加入が長いほど増える
重要なのは、厚生年金に加入すると1階部分(基礎年金)も同時にカバーされることです。最低等級であっても、厚生年金の加入期間は国民年金の加入期間として扱われるため、基礎年金が不利になることはありません。そのうえで2階部分が上乗せされます。
マイクロ法人スキームでは役員報酬を最低等級近辺(月5〜6万円前後の標準報酬)に設定するのが典型です(設定額の考え方は役員報酬はいくらが正解かの記事参照)。当然、この場合の報酬比例部分の積み上がりは小さくなります。
最低等級だと将来いくら増える?(概算イメージ)
正確な年金額は再評価率や年度改定で変わるため断定できませんが、考え方のスケール感だけ示します。報酬比例部分はおおむね「平均標準報酬×乗率×加入月数」で決まるので、標準報酬が月9万円弱の最低等級で20年加入した場合、報酬比例部分の上乗せは年10万円強程度が一つの目安と言われます(あくまで概算。実際の見込み額は「ねんきん定期便」「ねんきんネット」の試算が正です)。
この数字を見て「たったそれだけか」と感じるか、「国民年金だけの予定だったのが、保険料を減らしながら年10万円強も上乗せされるのか」と感じるか——後者が、個人事業主から移行する人の正しい受け止め方だと私は思います。
- 会社員基準で見る人:標準報酬30万円で20年なら報酬比例は年40万円前後のスケール感。それと比べれば確かに小さい
- 個人事業主基準で見る人:もともと2階部分はゼロ。最低等級でもプラスにしかならない
なお、健康保険側にも「傷病手当金・出産手当金が使える(国保には原則ない)」という給付面の上乗せがあり、年金だけでなく保障全体で見るとマイクロ法人側の給付は意外に手厚い、というのが顧問税理士の先生の評価でした。
国民年金のみ vs 最低等級厚生年金:総合比較
| 項目 | 個人事業主のまま(国保+国民年金) | マイクロ法人(最低等級の健保+厚生年金) |
| 毎年の保険料負担 | 所得に応じて増加(国保は上限まで上がる) | 報酬を固定すれば定額で低水準(会社負担分含め年30万円前後が目安) |
| 1階(基礎年金) | 加入期間に応じて満額まで | 同じ(厚生年金加入期間もカウント) |
| 2階(報酬比例) | なし | 小さいが積み上がる |
| 配偶者の年金 | 配偶者も第1号として保険料負担 | 扶養に入れば第3号(保険料負担なし) |
| 傷病手当金等 | 原則なし | あり |
表のとおり、個人事業主のままの自分と比べる限り、年金・保障の面で「減る」要素は見当たりません。特に配偶者を扶養に入れて第3号にできるケースでは、配偶者の国民年金保険料(年20万円前後が目安)が不要になったうえで配偶者の基礎年金は維持されるため、世帯で見た効果はさらに大きくなります。個人事業と法人の「二刀流」設計の全体像はマイクロ法人+個人事業主の二刀流戦略で解説しています。
発想の転換:削減した保険料の「差額」を自分で運用する
ここからがこの記事の本題です。マイクロ法人スキームは「年金を諦めるスキーム」ではなく、「国に強制的に預ける額を最小化し、浮いた差額の運用先を自分で選ぶスキーム」と捉えるのが正しい理解です。
個人事業主が国保+国民年金で年間数十万円〜百万円超を払っていたのが、スキームで年20〜50万円程度の削減になるケースが多い(節約額の目安はスキーム解説記事参照。所得により大きく変動)。この浮いた差額を毎年、税制優遇のある制度に回し続ければ、最低等級で小さくなった報酬比例部分を補って余りある可能性が十分にあります。
もちろん、公的年金には「終身でもらえる」「物価にある程度連動する」「障害・遺族保障が付く」という、自力運用では完全に代替できない強みがあります。だからこそ「全部自分で運用すればいい」ではなく、最低限の公的年金+税制優遇制度の三本柱で補うのが現実解です。
補い方3つ:iDeCo・小規模企業共済・NISAの位置づけ
① iDeCo(個人型確定拠出年金)=「自分でつくる2階部分」
- 位置づけ:公的年金の上乗せをつくる制度。掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税
- 注意点:原則60歳まで引き出せない。マイクロ法人の役員としての加入区分・掛金上限は勤務先の企業年金の有無等で変わるため、最新の上限額は公式(iDeCo公式サイト等)で確認を
- 向き:老後資金と割り切って長期で固定できる資金
② 小規模企業共済=「経営者の退職金」
- 位置づけ:小規模企業の経営者・役員・個人事業主のための退職金制度。掛金は月1,000円〜70,000円で全額所得控除(年最大84万円)
- 強み:受け取り時も退職所得控除等の優遇があり、掛金の範囲内での貸付制度もあるため、iDeCoより資金の柔軟性が高い
- 注意点:短期での任意解約は元本割れの可能性。制度の詳細と元本割れを防ぐ受け取り方は小規模企業共済の全知識の記事にまとめています
③ NISA=「流動性を残した長期運用枠」
- 位置づけ:運用益非課税の投資枠。所得控除はないが、いつでも売却して使える流動性が最大の強み
- 向き:60歳より前に使う可能性のある資金、教育費・住宅など中期資金と老後資金の中間層
- 注意点:投資なので元本保証はない。生活防衛資金を確保したうえでの長期・積立・分散が前提
使い分けの目安は、「拘束されてもよい老後専用資金→iDeCo」「退職金+いざという時の借入枠→小規模企業共済」「柔軟に動かしたい分→NISA」。私は顧問税理士の先生と相談し、まず小規模企業共済とNISAを埋め、残余資金でiDeCoという順番にしました(どれを優先すべきかは所得・年齢・家族構成で変わるので、専門家との個別シミュレーション推奨です)。
このスキームが向く人・向かない人
向く人
- 現在すでに個人事業主・フリーランスで、国保+国民年金を自分で払っている人(比較基準が「国民年金のみ」の人)
- 浮いた保険料差額を、使ってしまわずに運用へ回す規律を持てる人
- 扶養に入れられる家族がいる人(世帯効果が大きい)
- 個人事業と法人の事業を明確に分けられる人
向かない人・慎重に検討すべき人
- 会社員からいきなり移行を考えている人:厚生年金の積み上がりが大きく減る側の比較になるため、失うものが相対的に大きい
- 差額を運用に回さず生活費に溶かしてしまいそうな人:老後の準備が本当に痩せ細ります
- 法人と個人の事業区分が曖昧な人:そもそもスキーム自体の否認リスクがあります。この論点はスキームの注意点と否認リスク10論点で必ず確認してください
- 数年以内に廃業・再就職の可能性が高い人:法人の設立・維持コストが割に合わない可能性
実行前にやるべき2つの確認
- ① ねんきんネットで現状の見込み額を確認する:自分の加入履歴を前提にした試算が無料でできます。「今のままの場合」と「最低等級で継続した場合」のスケール感を自分の数字で掴むのが出発点
- ② 保険料削減額を年額で見積もる:直近の国保保険料の通知書と国民年金保険料から現状の年間負担を出し、最低等級の社会保険料(協会けんぽの最新保険料額表で確認)との差額を計算。この差額が「毎年の運用原資」です
この2つの数字が揃うと、「年金が減るかも」という漠然とした不安が、「年◯万円の差額を◯年運用すれば補える」という具体的な計画に変わります。不安の正体は、たいてい数字を見ていないことです。
よくある質問(FAQ)
Q. 最低等級だと、将来の基礎年金(1階部分)まで減りますか?
A. 減りません。厚生年金の加入期間は国民年金の加入期間として扱われるため、基礎年金は最低等級でも不利になりません。影響があるのは2階の報酬比例部分の「増え方」だけです。
Q. 会社員を辞めてマイクロ法人にした場合、それまでの厚生年金は消えますか?
A. 消えません。過去に積み上げた報酬比例部分はそのまま将来の年金に反映されます。変わるのは「これから先の積み上がりペース」です。
Q. 途中で役員報酬を上げれば年金も増えますか?
A. 増えます。厚生年金は加入期間全体の平均報酬で決まるため、後から報酬を上げた期間はその分反映されます。事業の成長に合わせて報酬を見直す柔軟性はこのスキームの利点の一つです(ただし社会保険料も増えるので損益分岐は要シミュレーション)。
Q. 付加年金や国民年金基金は使えますか?
A. 厚生年金加入者(第2号被保険者)は付加年金・国民年金基金の対象外です。個人事業主時代にこれらを使っていた人は、移行後はiDeCo等に乗り換える形になります。
Q. 結局、老後トータルで損か得かはどう判断すれば?
A. 「毎年の保険料削減額 × 実行年数 + その運用益」と「報酬比例部分の差 × 受給年数」の比較が骨格です。ただし寿命・運用利回り・制度改定という不確定要素が絡むため、断定はできません。ねんきんネットの試算と顧問税理士等の専門家によるシミュレーションで、ご自身の数字で判断してください。
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まとめ:「減る」ではなく「小さく増える+差額を自分で育てる」
マイクロ法人スキームと年金の関係は、感情ではなく比較軸で整理すれば、次のとおりシンプルです。
- 個人事業主のままと比べれば、年金は減らない。2階部分がむしろ「増える」
- 会社員と比べれば積み上がりは小さい。会社員からの移行は慎重に
- 基礎年金(1階)は最低等級でも不利にならない
- 浮いた保険料差額が毎年の運用原資。iDeCo・小規模企業共済・NISAの三本柱で補う
- 不安は数字で潰す。ねんきんネットの試算+差額の年額見積もりが出発点
- 事業区分が曖昧ならスキーム自体が危うい。否認リスクの確認を忘れずに
「年金が減るからやめておく」も「保険料が浮くから即やる」も、どちらも数字を見ていない点では同じです。ご自身の数字で試算し、納得してから踏み出してください。
※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・年金事務所等の各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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