【2026年版】マイクロ法人は何歳まで使える?70歳・75歳で変わる社会保険と高齢期のスキーム出口
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「このマイクロ法人スキーム、いったい何歳まで使えるの?」
「70歳を過ぎたら、社会保険料はどう変わる?」
「後期高齢者になったら、法人は畳んだほうがいい?」
マイクロ法人を長く運用するつもりの人、あるいはシニア世代でこれから検討する人にとって、「年齢の上限」は避けて通れない疑問です。ここで言うマイクロ法人とは、個人事業主が役員一人だけの小さな法人(合同会社が主流、株式会社でも可)を別途設立し、役員報酬を最低ラインに設定して社会保険料の負担をぐっと抑える「マイクロ法人スキーム」で使う法人を指します。仕組みの全体像はマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説をご覧ください。
結論を先に言うと、このスキームには「70歳」と「75歳」という2つの大きな節目があります。70歳で厚生年金の保険料負担が消え、75歳で健康保険から後期高齢者医療制度へ移行して、スキームの中核メリットが終了します。この記事では、年齢の節目ごとに何が変わるのか、そして高齢期の「出口」をどう設計するかを整理します。
この記事でわかることは次のとおりです。
- 70歳の節目:厚生年金の資格喪失で保険料負担がどう変わるか
- 75歳の節目:後期高齢者医療制度への移行でスキームがどう終わるか
- 60〜74歳の間、スキームにどれだけ実益が残るか
- 年金を「もらう側」になったときの在職老齢年金との相性
- 75歳以降を見据えた出口設計(畳む・休眠・承継)の考え方
まず全体マップ:年齢別に変わる社会保険の姿
細かい話に入る前に、マイクロ法人社長の社会保険が年齢でどう変わるかを一覧にします。
| 年齢 | 健康保険 | 厚生年金 | スキームの有効性 |
| 〜69歳 | 法人で加入(保険料あり) | 法人で加入(保険料あり) | フルに有効 |
| 70〜74歳 | 法人で加入(保険料あり) | 資格喪失(保険料なし) | 有効・コストはむしろ低下 |
| 75歳〜 | 資格喪失→後期高齢者医療へ | 資格なし | 中核メリット終了 |
つまり、スキームとしての「賞味期限」は実質75歳まで。ただし70歳以降はむしろ保険料負担が軽くなるため、終盤に向けて負担が増えるわけではありません。以下、節目ごとに見ていきます。
節目①70歳:厚生年金の保険料負担がなくなる
厚生年金保険の被保険者資格は、70歳に達した時点で喪失します。会社の役員を続けていても(在職中でも)ここは変わりません。つまり70歳以降は、厚生年金保険料の負担(会社負担分・本人負担分とも)がなくなります。
マイクロ法人の社会保険料は「健康保険+厚生年金」の2本立てですが、70歳からは健康保険(+40〜64歳なら介護保険分)だけになるため、法人が払う社保コストはむしろ下がります。「高齢になるとスキームのコストが重くなるのでは」と心配される方がいますが、実際は逆方向に動くわけです。
「70歳以上被用者該当届」と在職老齢年金の関係
1つ注意があります。保険料の負担はなくなっても、70歳以上で役員報酬を受け取って働く人は「70歳以上被用者」として在職老齢年金の支給調整の対象にはなり続けます。年金事務所への「70歳以上被用者該当届」(資格喪失届とセットの様式)による手続きが必要で、多くの場合は日本年金機構側の処理で自動的に切り替わりますが、通知が来たら内容を確認しておきましょう。「保険料は払わないのに、年金カットの判定対象ではあり続ける」という非対称な扱いがポイントです。もっとも、後述のとおり役員報酬が最低ラインのマイクロ法人では、カットの心配は実際ほぼありません。
節目②75歳:後期高齢者医療制度へ移行し、スキームの中核が終わる
75歳になると、今度は健康保険の被保険者資格も喪失し、全員が「後期高齢者医療制度」へ移行します。これは会社員・自営業・無職を問わない全国民共通のルールで、法人を持っているかどうかは関係ありません。
後期高齢者医療制度の保険料は、個人単位・所得ベースで計算され、市区町村(広域連合)経由で納付します。つまり「役員報酬を低く設定して健康保険料の等級を最低に抑える」というマイクロ法人スキームの中核テクニックは、75歳の時点で効かなくなるということです。ここがこのスキームの実質的なゴールラインだと考えてください。
ただし補足すると、後期高齢者医療の保険料も所得ベースなので、役員報酬を低く抑えてきた人はもともと所得が低く、保険料も相対的に低い水準になりやすい構造ではあります。「75歳で急に負担が跳ね上がる」というより、「法人で加入する意味がなくなる」と捉えるのが正確です。
60〜74歳の間の実益:国保が高い人ほど、高齢期も有効
「では60代・70代前半でスキームを続ける(始める)価値はあるのか?」——ここは国民健康保険との比較で考えます。
国保は退職後・高齢期になっても、所得や(自治体によっては)資産に応じて発生し続けます。事業収入・不動産収入・年金以外の収入がそれなりにある人は、60代・70代でも国保が年数十万円になるケースは珍しくありません。そういう人にとっては、マイクロ法人で健康保険に最低等級で入るメリットは74歳まで引き続き有効です。国保の負担感については国民健康保険が高すぎると感じたら読む記事も参考になります。
細かい点として、65歳以降は介護保険料の徴収方法が変わります。65歳以上は「第1号被保険者」となり、介護保険料は健康保険料への上乗せではなく、個人として市区町村に納付(多くは年金からの天引き)する方式になります。つまり65歳からは、介護保険料の部分は役員報酬の低さで圧縮できなくなる点は知っておいてください。
年金を「もらう側」になったら:在職老齢年金との相性は良い
65歳(繰上げなら60歳台前半)からは、年金を「払う側」と「もらう側」の両方の顔を持つことになります。ここで気になるのが在職老齢年金——働きながら厚生年金を受け取る場合、賃金(役員報酬)と年金の合計が基準額を超えると年金の一部が支給停止される仕組みです。
支給停止の基準は、令和8年度は「月51万円」が目安とされています(年度ごとに改定されるため、最新額は必ずご確認ください)。役員報酬を月4〜5万円程度に抑えているマイクロ法人社長なら、報酬と年金月額の合計がこの基準に届くケースはまれで、年金カットの心配はほぼないのが実情です。顧問税理士の先生からも「役員報酬が高い会社の社長は在職老齢年金で悩むが、マイクロ法人はそもそも低報酬だから相性がいい」と教わりました。高い役員報酬で働き続ける経営者と比べたとき、ここはスキームの隠れた利点です。
なお「厚生年金に安く入り続けたら、将来の年金額はどうなるのか」という論点はマイクロ法人で将来の年金は減る?で詳しく解説しています。
高齢期の出口設計:75歳を境に「維持費と便益」が逆転する
75歳で健康保険のメリットが終わると、法人を維持する理由は「事業を続けたいか」だけになります。一方で法人には、売上がなくても法人住民税の均等割(年7万円程度が目安)や決算・申告の手間が毎年発生します。維持費の詳細は合同会社の維持費にまとめています。出口の選択肢は大きく3つです。
- ① 解散・清算(畳む):事業を完全にやめるなら最有力。解散登記・清算手続きに一定の費用と手間はかかるが、以後の維持費はゼロになる
- ② 休眠:将来再開の可能性を残したい場合。異動届を出して活動停止するが、均等割や申告義務の扱いは自治体・状況により異なるため要確認。詳しくは売上ゼロ・休眠会社の税務へ
- ③ 事業承継:家族が事業を継ぐなら、代表交代して法人を引き継ぐ選択肢。相手にとってもスキームの器として使えるかは、その人の状況次第
判断基準はシンプルで、「法人を残すことで得られる便益」が「維持費+手間」を上回っているかを毎年チェックすることです。74歳までは健康保険メリットで便益側が勝ちやすく、75歳からは事業収入がない限り維持費側が勝ちやすくなります。
逆に、定年後にこれからマイクロ法人を作ろうと考えている方は、定年後に会社を設立する完全ガイドで設立の手順とシニア特有の注意点を先に押さえておくことをおすすめします。仮に65歳で設立すれば、75歳まで約10年間スキームを使える計算になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 70歳以降も役員報酬を払っていれば、厚生年金の受給額は増えますか?
A. 増えません。70歳で被保険者資格を失うため、保険料の負担がない代わりに、年金記録も積み上がらなくなります。なお在職中の年金額を毎年見直す「在職定時改定」も対象は65歳以上70歳未満の期間で、70歳以降の報酬は年金額に反映されません。
Q. 後期高齢者医療制度の保険料はいくらくらいですか?
A. 都道府県(広域連合)ごとに料率が異なり、所得に応じた「所得割」+定額の「均等割」で計算されます。所得が低い人には均等割の軽減措置もあります。役員報酬を低く抑えてきた人なら年間数万円台に収まるケースもありますが、あくまで目安であり、お住まいの広域連合の最新の料率でご確認ください。
Q. 法人を持っていると、年金の請求手続きで不利になりますか?
A. 不利にはなりません。年金請求の手続き自体は法人の有無と関係なく進められます。ただし役員報酬を受け取っている間は在職老齢年金の判定対象になるため、請求時に「厚生年金保険の被保険者(または70歳以上被用者)である」ことを前提に支給額が計算されるだけです。前述のとおり低報酬のマイクロ法人なら実害はほぼありません。
Q. 75歳になったら、法人はすぐ畳まないといけませんか?
A. 義務はありません。事業を続けたい・収入の受け皿として残したいなら、75歳以降も法人を維持して構いません。変わるのは「健康保険のメリットがなくなる」ことだけです。維持費(均等割・申告の手間)と便益を天秤にかけて、ご自身のペースで判断すれば大丈夫です。
Q. 74歳でスキームを始めるのはさすがに遅すぎますか?
A. 75歳で健康保険の中核メリットが終わるため、設立費用・手間の回収期間が1年未満となり、一般論としては見合わない可能性が高いです。60代後半までであれば、国保との差額次第で十分検討に値します。個別の損得は顧問税理士や年金事務所への確認をおすすめします。
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まとめ:スキームの賞味期限は実質75歳。節目を知って出口を描く
マイクロ法人スキームと年齢の関係を、要点で振り返ります。
- 70歳で厚生年金の被保険者資格を喪失。保険料負担が消え、社保コストはむしろ下がる
- ただし70歳以降も役員報酬を受け取る間は「70歳以上被用者」として在職老齢年金の判定対象
- 75歳で健康保険から後期高齢者医療制度へ移行し、スキームの中核メリットは終了
- 60〜74歳は、国保が高くなる収入構造の人ほど引き続き有効。65歳からは介護保険料が個人納付に変わる点に注意
- 在職老齢年金の基準(令和8年度は月51万円が目安)に対し、低報酬のマイクロ法人は相性が良く年金カットの心配はほぼない
- 75歳以降は「維持費と便益」が逆転しやすい。畳む・休眠・承継の3択を早めに検討する
スキームには終わりがありますが、それは「失敗」ではなく制度上の自然なゴールです。節目の年齢を頭に入れて、70歳・75歳の手前で一度立ち止まり、顧問税理士や年金事務所と相談しながら出口を設計していきましょう。
※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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