公務員はマイクロ法人を作れる?副業規定との関係と現実的な選択肢【2026年版】
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「公務員でもマイクロ法人を作れるの?」
「副業禁止と聞くけれど、役員になるだけならセーフ?」
「配偶者の名義にすれば問題ないという話は本当?」
結論から書きます。公務員が営利企業の役員を兼ねることには法律上の制限があり、原則として任命権者の許可が必要です。無許可で進めることはできません。この記事は、その制度の中身を誠実にお伝えし、正規のルートと現実的な選択肢を整理するためのものです。抜け道を紹介するものではないことを、あらかじめお断りしておきます。
前提として、この記事で扱うマイクロ法人とは、役員が自分ひとりだけの小規模な会社(実務では合同会社が多く、株式会社でも可)を持ち、そこからの役員報酬をあえて低く設定することで社会保険料の負担を軽くする、という使われ方をする法人のことです。仕組みそのものはマイクロ法人 社会保険料削減スキームの完全解説にまとめてあります。この記事でわかることは次のとおりです。
- 国家公務員法・地方公務員法の兼業規制の基本的な考え方
- 例外的に認められうる範囲(不動産賃貸などの目安)
- 配偶者名義にする案が抱える落とし穴
- そもそも公務員にマイクロ法人スキームの効果が出るのか
- 退職後を含めた、現実的な選択肢の整理
まず制度の確認:兼業規制の枠組み
公務員の兼業については、次のような規定が置かれています。細かい条文の解釈は所属先や専門家の判断によりますので、ここでは枠組みだけを示します。
| 区分 | 根拠 | 基本的な考え方 |
| 国家公務員 | 国家公務員法(私企業からの隔離、他の事業・事務の関与制限) | 営利企業の役員兼業や自営は原則制限され、所轄庁の長等の承認・内閣総理大臣および所轄庁の長の許可が求められる |
| 地方公務員 | 地方公務員法(営利企業への従事等の制限) | 営利企業の役員等を兼ねる場合、任命権者の許可が必要 |
| 共通 | 職務専念義務・信用失墜行為の禁止 | 許可の有無にかかわらず、本務への支障や公正性への疑いを招く行為は問題になり得る |
ポイントは、「禁止」ではなく「許可制」だという点です。つまり道が完全に閉ざされているわけではありませんが、自己判断で進めてよいものでもありません。無許可で役員に就任した場合、懲戒処分の対象になり得ます。
近年の「副業解禁」との関係
公務員の副業について緩和の動きがある、という報道を目にした方もいるかもしれません。ただし、その多くはNPOでの地域貢献活動など、営利を目的としない分野を中心とした緩和です。営利企業の役員として報酬を得るケースが一般的に解禁された、という理解は避けた方が安全です。自治体ごとに制度の整備状況も異なるため、必ず所属先の規定を確認してください。
例外的に認められうるもの:不動産賃貸などの「自営」の扱い
実務でよく話題になるのが、相続した不動産の賃貸です。国家公務員については、人事院規則とその運用通知で、どこからが「自営」に当たるかの目安が示されています。一般に知られている水準としては、次のようなものです(いずれも目安であり、最新の基準は必ず原典と所属先でご確認ください)。
- 独立した家屋がおおむね5棟以上
- アパート等の部屋数がおおむね10室以上
- 賃貸に係る収入が年額500万円以上
- 土地の賃貸で一定件数以上
これらに該当すると「自営」として扱われ、承認・許可を得なければ行えないとされています。逆に言えば、この規模を下回る小規模な賃貸であれば、自営に該当しないものとして取り扱われる余地があるということです。ただしこれは「個人として不動産を持っている場合」の話であり、法人を設立して自分が役員になるのであれば、規模にかかわらず役員兼業の許可の論点が生じます。ここを混同しないよう注意してください。地方公務員の場合は、各自治体が独自に基準を定めていることが多いので、所属先の規程を確認する必要があります。
なお、不動産賃貸を法人の事業として持つ場合の一般的な論点は不動産賃貸をマイクロ法人の事業にで整理しています。
「配偶者名義にする」案の落とし穴
公務員の方から相談を受けたときに、必ずと言っていいほど出てくるのがこの案です。配偶者を代表者にして法人を作り、自分は関与していない形にする、というものです。
しかし、この設計には無視できない問題があります。
① 実態が問われる
名義が配偶者であっても、実際に事業の意思決定をし、業務を行っているのが本人であれば、その実態が問われる可能性があります。これは公務員の兼業規制の面だけでなく、税務の面でも同じです。誰の事業かは名義ではなく実態で判断される、というのが基本的な考え方です。
② 配偶者側の負担が実際に発生する
本気で配偶者の事業として成立させるなら、配偶者が代表者としての責任を負い、社会保険や税務の手続きも配偶者の名前で行われます。「形だけ」では済まないということです。配偶者が本当にその事業を担うのであれば正当な選択ですが、それは公務員本人のマイクロ法人ではなく、配偶者の会社です。
③ 配偶者の扶養や社会保険の前提が変わる
配偶者が法人から役員報酬を受け取れば、扶養の範囲や社会保険の加入関係が変わります。世帯全体で見て負担が増える可能性もあるため、思いつきで進めるのは危険です。
要するに、名義を借りるという発想自体を採らないのが、いちばん確実です。
そもそも効果が出るのか:公務員と社会保険
ここは意外と見落とされがちな点です。マイクロ法人スキームの本来の狙いは、国民健康保険・国民年金の重い負担を、法人経由の社会保険に置き換えることにあります。ところが公務員の方は、すでに共済組合等で公的医療保険と年金に加入しています。
この状態で別の法人から報酬を受け取ると、2か所で被保険者となり、報酬を合算したうえで按分される仕組みが働きます。つまり、会社員の副業の場合と同様に、社会保険料の合計が下がる方向には働きにくいのです。この構造は会社員の副業でマイクロ法人は作れる?(社保二重加入)で詳しく説明しています。
制度上の許可というハードルを越えたとしても、期待した効果が得られないのであれば、そもそも設立の動機を見直した方がよい――というのが、私の正直な見立てです。
現実的な選択肢を整理する
① 所属先に正式に確認する
まずは人事担当部署に、兼業の許可制度の有無と申請手続きを確認してください。相談すること自体は何も問題ではありません。曖昧なまま進めるより、はっきりさせる方が精神的にも楽です。
② 許可の対象になりうる範囲を知る
相続した不動産の賃貸など、事情によっては承認・許可が下りることがあります。何が認められ、何が認められないのかは所属先の判断です。一般論をネットで集めるより、直接聞く方が正確です。
③ 在職中は無理に法人を持たない
効果が出にくく、規制のリスクがあるのであれば、在職中は個人の範囲でできる資産形成に集中するという選択も十分合理的です。iDeCoなど、公務員でも利用できる制度は存在します(限度額は職域により異なります)。
④ 退職後を見据えて準備する
退職して公務員でなくなれば、兼業規制の制約はなくなり、国民健康保険に切り替わることで負担の構図も変わります。定年後に会社を設立する場合の全体像は定年後に会社を設立する完全ガイドにまとめました。在職中は情報を集め、設立は退職後に、という順番は現実的な選択肢です。
よくある質問(FAQ)
Q. 出資するだけで役員にならなければ大丈夫ですか?
A. 役員に就任しないのであれば、役員兼業の制限とは別の話になり得ますが、実質的に経営に関与していれば同じ論点が生じ得ます。また出資の内容によっては別途の規制に触れる可能性もあります。自己判断せず、所属先に確認してください。
Q. 無報酬の役員なら許可は不要ですか?
A. 報酬の有無だけで結論が決まるとは限りません。営利企業の役員を兼ねること自体が制限の対象とされているため、無報酬でも許可が必要とされるケースがあります。ここも所属先への確認が必須です。
Q. 会計年度任用職員や非常勤でも同じですか?
A. 身分や勤務形態によって適用される規定や運用が異なる場合があります。常勤職員と同じ前提で考えず、自分の身分に対応する規程を確認してください。
Q. 許可を取らずに設立してしまいました。どうすれば?
A. 放置するほど状況は悪くなります。早い段階で所属先に相談し、必要な手続きや是正の方法を確認するのが現実的です。必要に応じて弁護士など専門家の助言も検討してください。
Q. 退職後にすぐ法人を作っても問題ありませんか?
A. 一般的には自由になりますが、離職後の再就職に関する制限が設けられている場合もあります(職務との関係性による規制など)。退職前に、自分に適用される規定を確認しておくと安心です。
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まとめ:許可が前提、自己判断で進めない
この記事の要点を整理します。
- 公務員が営利企業の役員を兼ねるには、原則として任命権者等の許可が必要。無許可では行えない
- 不動産賃貸などは一定規模以下なら自営に当たらないとされる目安があるが、法人を作って役員になるなら別途の論点が生じる
- 配偶者名義にする案は、実態が問われるうえ、配偶者側の負担や扶養の前提も変わる
- すでに共済等に加入しているため、そもそも社会保険料の削減効果は出にくい
- 在職中は情報収集にとどめ、退職後に検討するという順番も現実的
公務員という立場は、制度の面でも周囲の目という面でも、慎重さが求められる仕事です。この記事で書いたのはあくまで一般的な枠組みであり、個別の可否を判断できるのは所属先だけです。気になることがあれば、必ず所属先の人事担当部署に確認し、必要に応じて弁護士・社会保険労務士・税理士など専門家に相談してください。自己判断で進めないことが、結局は自分を守ります。
※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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