【2026年版】マイクロ法人の定款「事業目的」の書き方と具体例|個人事業と分けて否認リスクを避ける
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「定款の『事業目的』って何を書けばいいの?」
「個人事業と同じ内容を書いたらダメって聞いたけど、なぜ?」
「後から事業を追加したくなったら変更できる?費用は?」
マイクロ法人の設立準備で、商号や資本金はすんなり決まるのに、多くの人が手が止まるのが定款の「事業目的」です。しかもマイクロ法人の場合、事業目的は単なる形式的な記載ではありません。個人事業と法人の「事業の分離」を対外的に示す最初の証拠であり、書き方を誤るとスキームの根幹である所得分散の合理性を疑われる入口になり得ます。
前提を揃えておくと、マイクロ法人とは、個人事業主が役員一人だけの法人(合同会社が主流、株式会社でも可)を別に設立し、役員報酬を最小限に設定して社会保険料の負担を大幅に抑える「マイクロ法人スキーム」の器となる会社のことです。スキーム全体の仕組みとリスクはマイクロ法人 社会保険料削減スキームの解説記事にまとめています。
この記事では、現役のマイクロ法人社長として、また顧問税理士の先生から教わった内容をベースに、
- 事業目的とは何か(定款・登記でどう扱われるか)
- マイクロ法人で事業目的が特に重要な理由
- 書き方の基本ルール(明確性・営利性・適法性)
- 個人事業との分け方:業種別の具体例
- そのまま使える記載例とNGパターン
- 登記後に変更する場合の手続きと費用
を、実際に私が定款を作ったときの経験も交えて解説します。
事業目的とは:定款に必ず書き、登記で公開される情報
事業目的とは、「この会社は何の事業を行うか」を定款に列挙したものです。ポイントは3つあります。
- 定款の絶対的記載事項:商号・本店所在地などと並び、書かなければ定款自体が無効になる必須項目です(合同会社・株式会社とも共通)
- 登記されて誰でも見られる:事業目的は登記事項なので、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取れば取引先・銀行・税務署の誰でも確認できます
- 会社は目的の範囲内で活動する建前:目的に書いていない事業を大々的に行うのは建前上問題があり、実務でも銀行口座開設や許認可の審査で「目的に書いてあるか」を見られます
つまり事業目的は「社内メモ」ではなく、外部に対する会社の自己紹介です。マイクロ法人ではこの「外部から見える」という性質が、次に述べる理由で決定的に重要になります。
マイクロ法人で事業目的が特に重要な理由:所得分散の否認リスク
マイクロ法人スキームは、個人事業とマイクロ法人で別々の事業を営むことが大前提です。もし両者が実質的に同一の事業なら、「社会保険料と税負担を下げるためだけに、一つの事業を形式的に二つに割った」と見られ、税務調査で所得分散を否認されるリスクが生じます。
そして調査官や銀行が最初に見る客観的資料の一つが登記簿、つまり事業目的です。
- 個人事業の開業届に「Webデザイン業」、法人の目的にも「Webサイトの企画・制作」——これでは同一事業を自白しているようなもの
- 逆に、目的レベルで明確に分かれていれば、「事業の実態を分ける設計」の第一歩の証拠になります
もちろん、事業目的を書き分けただけで安全になるわけではありません。実際の取引・請求書・入金口座・帳簿が分かれていて初めて「別事業」と言えます。ただ、定款は設立時に一度書いたら簡単には直さない文書だからこそ、最初から分離を意識して設計しておく価値が大きいのです。事業をどう分けるかの発想自体はマイクロ法人におすすめの事業7選が、スキーム全体の設計手順は設立手順5ステップの実務ガイドが参考になります。
書き方の基本ルール:明確性・営利性・適法性+附帯条項
事業目的の書き方には、登記実務上の3つの基本ルールがあります。
① 明確性:誰が読んでも事業内容がわかる言葉で
造語や曖昧すぎる表現は避け、一般に通用する語で書きます。「シナジーの創出」のような抽象語はNG、「経営コンサルティング業」ならOK、というイメージです。迷ったら、法務局や書籍・設立支援ツールに蓄積された実績のある定型表現から選ぶのが安全です。
② 営利性:事業として収益を上げられる内容か
会社は営利法人なので、「ボランティア活動」のような営利性のない目的だけを書くことはできません。通常の事業名で書いていれば問題になることはまずありません。
③ 適法性:法令に違反する事業は書けない
違法な事業はもちろん、弁護士・税理士業務のように資格者にしか許されない業務を無資格の会社の目的にすることもできません。また、許認可が必要な事業(古物営業、人材紹介、宅建業など)を行う予定なら、許認可審査で求められる文言を事前に確認して、その通りに書いておく必要があります。
末尾の定番:「前各号に附帯又は関連する一切の事業」
目的の最後には、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を入れるのが実務の定番です。これにより、列挙した事業に付随する細かな活動をいちいち書かなくてもカバーできます。逆に言うと、この附帯条項があっても本業として行う事業は個別に書いておくべきです。
個人事業との分け方:業種別の具体例
ここが本記事の核心です。「個人事業に書いた事業を、法人の目的には書かない」を大原則に、業種別の分け方の例を挙げます。マイクロ法人側の事業は、労働集約でなく管理・運用型の事業(資産運用、不動産管理、コンテンツ販売など)が選ばれることが多い、というのが実務の傾向です。
| 個人事業の内容 | マイクロ法人側の事業目的の例 |
| Webデザイン業 | 有価証券の保有・運用/不動産の賃貸・管理/経営コンサルティング業 |
| ITエンジニア(受託開発) | 電子書籍・オンライン講座等のコンテンツの企画・制作・販売/広告代理業 |
| ライター・編集業 | インターネットを利用した物品の販売(EC)/有価証券の保有・運用 |
| 経営コンサルタント | 不動産の賃貸・管理/セミナー・講演会の企画・運営 |
| デザイン系ハンドメイド販売 | 経営コンサルティング業/有価証券の保有・運用 |
ポイントは3つです。
- 収益構造で分ける:個人=労務提供(人月・受託)、法人=資産・コンテンツからの収益、のようにお金の生まれ方が違う組み合わせは説明しやすい
- 取引先で分ける:個人=BtoBの特定クライアント、法人=BtoCの不特定多数、も分離の説明として有効
- 実際にやる事業だけ書く:見栄えのために実態のない事業を並べるのは逆効果(後述のNGパターン参照)
そのまま使える記載例(法人=資産運用+コンテンツ販売型)
- 1. 有価証券の保有、運用及び投資
- 2. 不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介
- 3. 電子書籍、動画等のデジタルコンテンツの企画、制作及び販売
- 4. セミナー、講演会及び研修会の企画、運営
- 5. 前各号に附帯又は関連する一切の事業
目的の数は3〜6個程度に絞るのが私のおすすめです(理由は次のNGパターンで)。
NGパターン5つ
- ① 個人事業と同じ・実質同一の目的を書く:最悪のパターン。「Webデザイン業」と「Webサイトの企画・制作」のような言い換えレベルの違いは同一事業と見られても仕方ありません
- ② 目的を何十個も羅列する:やる予定のない事業まで大量に並べると、実態が見えない会社として銀行の口座開設審査で不利になりがちです。マイクロ法人は特に実態を疑われやすい形態なので、実際にやる事業に絞るのが得策
- ③ 許認可が必要な事業を無計画に入れる:「労働者派遣事業」などを実態なく書くと、審査で説明を求められる原因に。逆にやる予定があるなら所管庁指定の文言で正確に
- ④ 曖昧・流行語で書く:「DX支援」「Web3関連事業」のような流行語だけでは明確性を欠くと判断されることがあります。「デジタル技術を活用した業務改善に関するコンサルティング業」のように一般語へ翻訳を
- ⑤ 附帯条項に頼りすぎる:「前各号に附帯…」があるからと本業を書かずに始めるのはNG。目的に書いていない事業の売上が主力になっている状態は、対外的な説明が苦しくなります
登記後に変更する場合の手続きと費用
事業目的は設立後でも変更(追加・削除)できます。ただしタダではありません。
- 手続き:定款変更(合同会社は原則総社員の同意、株式会社は株主総会の特別決議)→法務局へ変更登記申請。一人会社なら意思決定は自分一人なので実質は書類作成のみ
- 費用:変更登記の登録免許税3万円が最低ライン。司法書士に依頼すれば報酬が別途1〜3万円程度が相場感
- 期限:変更から2週間以内の登記申請が原則
つまり、設立時に数年先まで見据えて書いておけば3万円の節約になります。「近い将来やる可能性が具体的にある事業」は最初から入れておく、「妄想レベルの事業」は入れない、が線引きの目安です。なお、設立時に決める他の項目(資本金の額や株式の発行価額)とのバランスは会社設立時の株価と資本金の決め方も参考にしてください。
事業目的が影響する3つの実務場面
「登記さえ通ればいい」ではなく、事業目的は設立後の実務でも次の場面で効いてきます。
- ① 法人銀行口座の開設審査:目的と事業計画の整合性を見られます。目的が多すぎる・実態と乖離している会社は審査に時間がかかる傾向
- ② 税務調査:個人事業と法人の事業区分を確認する出発点。目的・実際の取引・帳簿が一貫していることが防御力になります
- ③ 取引先との契約・許認可:業種によっては契約時に登記簿を確認され、「目的に書かれていない事業」への発注を嫌う相手もいます
マイクロ法人の基礎からおさらいしたい方はマイクロ法人とは?の入門記事もどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. 事業目的はいくつまで書けますか?
A. 法律上の上限はありません。ただしマイクロ法人では実際に行う3〜6個程度に絞るのが実務的です。多すぎると銀行審査等でかえって不利に働きがちです。
Q. 個人事業と法人で、事業目的が1つでも重なったら即アウトですか?
A. 即アウトではありません。最終的には実態(取引・収益・帳簿の分離)で判断されます。ただ、目的レベルで重なっていると説明の負担が増えるのは確かなので、書き分けられるなら書き分けるに越したことはない、というのが顧問税理士の先生の見解でした。
Q. 「有価証券の保有・運用」だけの一本でも会社は作れますか?
A. 作れます。いわゆる資産管理会社型のマイクロ法人です。ただし収益の実態(配当・売却益等)が伴わないと「事業を営む法人」としての説明が弱くなるため、収益計画とセットで設計してください。
Q. 定款の目的と、実際に始めた新事業がズレてきたら?
A. 新事業が一時的・付随的なら附帯条項でカバーできる場合もありますが、主要事業になるなら目的追加の変更登記(登録免許税3万円)を行うのが筋です。放置すると銀行・取引先への説明で困ります。
Q. 事業目的は自分で書けますか?専門家に頼むべき?
A. 定型的な事業なら、設立支援ツールの文例から選ぶだけで十分書けます。ただし個人事業との分離設計はスキームの根幹なので、目的の文言だけでなく事業設計全体を顧問税理士に見てもらうのが安全です。
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まとめ:事業目的は「分離設計の最初の証拠」。絞って、分けて、実態を伴わせる
- 事業目的は定款の必須項目で、登記により誰でも見られる
- マイクロ法人では、個人事業との分離を示す最初の客観的証拠になる
- 個人事業と同一・言い換えレベルの目的はNG。収益構造や取引先の違いで書き分ける
- 明確性・営利性・適法性+末尾の附帯条項が基本ルール
- 数は3〜6個目安。実際にやる事業だけ書く
- 後から変更すると登録免許税3万円。具体的な予定は最初から入れておく
- 目的の書き分けはスタート地点。実際の取引・帳簿の分離まで揃って初めて「別事業」
定款の事業目的は、一度書けば何年も会社の「顔」になり続けます。テンプレートの写経で済ませず、ご自身のスキーム設計に沿って一行ずつ意味を持たせてください。
※本記事は2026年7月時点の法令・運用を前提とした、筆者個人の理解と顧問税理士から聞いた内容に基づくものです。実際の判断は、顧問税理士・年金事務所等の各機関にご確認のうえご自身の責任でお進めください。
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